不朽の名作「鉄男」及び「鉄男Ⅱ」で、肉体を題材に無機質な美を描き出した塚本晋也監督。
その塚本監督による、愛する者の死とその肉体との会話を静かに謳いあげた「ヴィタール」を鑑賞しました。
交通事故で記憶をなくした医学生、高木。
偶然にも、同じ事故で亡くなった恋人が献体し、その遺体を高木が解剖することになります。
少しずつ記憶を取り戻していく高木。
同時に、中有の闇を彷徨う恋人と過ごす時間を持つようになります。
そしてその時間は、夢のような現のような、もう一つの現実。
今ここに生きてあるのと同様に、リアルなのです。
亡くなった恋人に嫉妬する女子医学生。
しかし美しい思い出でしかない恋人に勝てるはずもありません。
解剖にのめり込む高木。
それを見つめる女子医学生。
肉の塊でしかないはずの遺体が、体が鉄に変化していく男の苦悩を描いた「鉄男」の鉄とだぶります。
身近な者の死を描いた映画では、「息子の部屋」が高い評価を得ていますが、私は涙の押し売りみたいで好きになれませんでした。
しかし「ヴィタール」では、幻想的な映像美で、涙を使わずに身近な者の死が意味するところを突きつけ、それはとても切ない印象を与えました。
塚本監督の新境地と言うべきでしょう。
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