早すぎた埋葬

文学

 フィリピンで3歳の女児が葬儀の最中に生き返り、病院に搬送されたそうですね。
 参列者は腰を抜かしたでしょうが、時折、こういうことが起こります。

 医学が進歩していなかった頃は、仮死状態のまま埋葬され、墓穴の中でよみがえり、それらの人々がゾンビ伝説やヴァンパイア伝説を生みだしたものと考えられています。

 ただし、今と違うのは、生き返った、と喜んで病院に連れ込むのではなく、化け物だ、悪魔だ、と言われて寄ってたかって撲殺されてしまったこと。

 せっかく生き返ったのに、浮かばれませんねぇ。

 わが国のコントなどでも、葬式の最中むっくり起き上がり、なぜかそのまま葬式用の酒肴で酒盛りを始める、なんていう番組がありました。

 私が一番怖れるのは、火葬場に入れられた後に生き返ること。

 泣いても叫んでも誰も気づかず、生きたまま焼かれてしまうのです。
 これは様々な最期のなかでも、最も悲惨なのではないでしょうか。

 じつはそういう場面を描いた小説があります。
 たしか、筒井康隆「七瀬ふたたび」だったように記憶しています。

七瀬ふたたび (新潮文庫)
筒井 康隆
新潮社

 人の心を読むことができる超能力者の家政婦、七瀬が、自分に辛くあたったおばあさんの葬儀の際、火葬場に入れられたおばあさんが生き返り、焼け死ぬことを怖れて泣き叫んでいることを読み取るのですが、非情にも、七瀬は放置し、おばあさんは生きたまま焼かれてしまうのです。

 この小説を読んで、震え上がったことを鮮やかに思い出します。

 最期は生き返ることなく、きっぱりと死にたいものですねぇ。

にほんブログ村 本ブログ 純文学へ
にほんブログ村


人文 ブログランキングへ