ドイツのノーベル賞作家、ギュンター・グラス氏が亡くなった、との報に接しました。
享年87歳。
大往生と言っても良い年ですが、そういう感慨はわきません。
私にとっては、「ブリキの太鼓」の印象が鮮烈です。
自らの意志により、3歳で成長を止めた子供を主人公にした、奇怪かつ緻密な作品です。
かなりグロテスクな描写もあり、まさしく大人のための残極物語といったところでしょうか。
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たしか私が小学生の頃映画化され、カンヌでパルムドールを受賞したように記憶しています。
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ダービッド・ベネント,シャルル・アズナヴール,アンゲラ・ヴィンクラー,ダーヴィッド・ベネント,ダニエル・オルブリフスキ | |
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その年は「エレファント・マン」が話題で、小学生だった私には「ブリキの太鼓」は難解に過ぎ、「エレファント・マン」のほうが面白いのに、と思ったものです。
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当時は人道的な愛の映画みたいに言われていましたが、監督がデヴィット・リンチであったことを考えると、奇妙な物を偏愛する邪しまな欲望を感じます。
ギュンター・グラスという人、10代の頃はナチ党員であったことを告白したり、東西ドイツの政治的統一に徹底的に反対したり、けっこう政治色が強い印象を受けます。
小説家に限らず芸術家や創造を生業とする者が政治に口を出しても碌なことがない物ですね。
アクの強い独特の作風は好悪が分かれるかと思いますが、巨大な作家が世を去ったことは事実です。
死してなお、人々に生死の意味を挑戦的に問いかけているような気がしてなりません。
ご冥福を祈ります。