ちょっと今から仕事やめてくる

文学

 昨夜、「ちょっと今から仕事やめてくる」という小説を読みました。
 軽い読み物といった趣で、すらすら読めました。
 電撃小説大賞メディアワークス文庫賞というのを受賞したそうです。

 印刷会社に勤め、営業に精を出す新入社員の苦しみを描いた作品で、なんとなく、身につまされました。

 働く意味を考えつつも日々の激務に追われ、駅のホームから転落しそうになった主人公を助けたヤマモト。
 ヤマモトは主人公の小学生時代の同級生を名乗りますが、主人公にはヤマモトの記憶がありません。
 しかしヤマモトと酒を飲んだり休日を一緒に過ごしたりするうち、少しづつ元気を取りもどしていきます。
 ミステリアスながら底抜けに明るいヤマモト。

 それでも日々の激務や、営業同士の足の引っ張り合い、上司からのきつい叱責にしだいにおいこまれていきます。

 サラリーマンならだれもが一度は通るしんどい道。

 涙なしには読めません。


 月曜日の朝は、死にたくなる。
 火曜日の朝は、何も考えたくない。
 水曜日の朝は、一番しんどい。
 木曜日の朝は、少し楽になる。
 金曜日の朝は、少し嬉しい。
 土曜日の朝は、一番幸せ。
 日曜日の朝は、少し幸せ。でも、明日を思うと一転、憂鬱。
 以下、ループ


 主人公が作った「一週間の歌」という詩です。

 稚拙ですが、気持ちはよく分かります。
 新人ならずとも、20年以上の経験がある私にしてからが、同じような気持ちです。

 尊敬していた先輩が自分の営業の成果を横取りしようと画策していたことを知り、主人公はついに退職を決意します。

 なんだか退職または転職の勧めみたいな感じもしますが、若いうちはどうしても嫌だったら辞めるのも良いでしょう。
 無理に続けて体を壊してしまってはつまらないですから。

 しかし40代半ばまで、辞めたい辞めたいと思いながら続けてしまった私は、今の仕事にしがみつくしかありません。
 もはや転職は不可能だろうし、可能だったとしても、給料は激減するでしょうから。

 若い頃、少しの勇気があれば、また違った人生があったのかもしれませんが、それを嘆いても詮無いことです。

 やがて明らかになるヤマモトの正体。
 主人公はヤマモトに導かれるようにして、新たな道を歩き始めます。

 しんどい題材を、軽い読み物に仕上げた力量はなかなかのものです。

 ただし、本当に自分に合わないとか、ブラック企業だとかでないかぎり、1年は我慢してみたほうが良いでしょうね。
 1年経つとまた見える景色が違ってくるでしょうから。

ちょっと今から仕事やめてくる (メディアワークス文庫)
北川恵海
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス

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