涙な添へそ

文学

 7月の初日は朝から雨。
 梅雨であればやむを得ません。
 雨が降ると、それだけで気分が沈むのを、どうすることもできません。

 むかし思ふ 草の庵の 夜の雨に  涙な添へそ 山ほととぎす     藤原俊成

 「新古今和歌集」に所収の和歌です。

 草庵で昔を偲ぶ雨の夜、悲しい声で涙を誘ってくれるな、ホトトギスよ、といったほどの意味かと思います。
 
 独り寂しい草の庵で雨音を聞きながら昔を思い出すというのは、寂しい状況のはずですが、私はこの歌に、どこかメランコリックな快感を覚えます。
 憂愁というもの、辛いようでいて、それがメランコリーにとどまっている限り、なぜか心地よいものです。

 寂しい歌や悲恋の物語などが好まれるのも、メランコリーの快感を覚えるからではないかと推測します。
 こんな日は私も暗い快感に沈むとしますか。