中年サラリーマンの物語

文学

  午前中、軽作業をしたらひどく疲れてしまい、お昼で早退しました。
 普段あまり自覚していませんが、加齢と運動不足により、だいぶ体力が落ちているようです。

 帰宅途中、蕎麦屋によって鴨せいろを食い、帰るなり風呂に入って少し横になりました。

 元気になって、最近お気に入りの作家、奥田英朗の短編集「マドンナ」を一気に読みました。

マドンナ (講談社文庫)
酒井 順子
講談社

 どれも40代の中間管理職を主人公にしたサラリーマン小説で、ちょうど私と同年代だけに面白く読みました。

 表題作は、40代半ばの主人公が、新しく配属された25歳のOLに淡い恋心をいだき、一人相撲を取るというほろ苦いお話。
 その他にも、何事もドライな年下の女部長の部下になった中年課長が、日本的慣習に染まらない外資系から転職してきたその部長の意外な一面を見つけて納得するお話など、サラリーマンにありがちな、小さな物語が巧みに紡ぎだされています。

 私は精神障害で複数回にわたって半年以上の病気休暇を取ってしまったことから、出世しないことははっきりしています。

 この短編集には、出世意欲ばりばりの中年から、事なかれ主義で出世を諦めた人まで、様々な中年男が登場します。

 それにしても人の上に立ちたがる、あるいは威張りたがるというのはどういう心性なのでしょうね。
 そういう欲求あればこそ、向上もするのでしょうけれど、精神科医から「何よりも大切なのはハッピー感を感じながら生きているかです」、と耳にタコができるほど諭され、だんだん私もその気になってしまい、出世ということにこだわりがなくなってしまいました。

 出世することが最大のハッピーだというのであれば熾烈な出世競争も楽しいのかもしれませんが、所詮は退職する日が訪れます。
 大出世して天下りしたところで、やっぱりいつかは完全リタイアするのが普通でしょう。

 完全リタイアして後、地域で「俺は○○会社の元役員だったのだ」なんて威張ったところで、嫌われるだけです。

 私にとってハッピーな時間とはいつでしょうね。
 日々の晩酌、土日の朝風呂、休日の散歩、読書にDVD鑑賞。

 色々ありますが、これさえあれば、というようなことは何一つ無いような気がします。
 これから新しい趣味を始めようという気もありません。

 だらだらと流されて生きてきちゃいました。

 これからもそうなんでしょうけれど、それを嘆かない、鋼の精神を身につけたことこそが、ハッピーなのかもしれません。