奥田英朗の長編小説、「サウス・バウンド」を読み終わりました。
爽やかな読後感ですが、すぐに内容を忘れてしまいそうな感じもします。
小学六年生の次郎は中野在住。
両親と姉と妹の5人暮らしです。
で、父親の一郎というのがとんでもない男です。
元過激派で、警察でも有名な暴れ者。
逮捕歴もあります。
185センチの大男で、何より国家が大嫌い。
働きもせず、小説なんか書いています。
母親は喫茶店を経営し、一家を支えています。
母親は夫の一郎に心酔しているご様子。
中野では、不良少年と次郎が戦ったり、友人と遊んだり、少年小説の趣を呈しています
ところが、父親が突然西表島に移住して自給自足の生活をする、と言い出し、実際に一家は引っ越します。
ここでもリゾート開発をめぐって一郎は大活躍。
ついには騒ぎを起こし、子供たちを置いて夫婦で波照間島に逃げてしまいます。
この小説で印象深いのは、次郎という少年の成長とともに、沖縄の歴史がさりげなく語られることでしょうか。
かつては琉球王国に属していなかった石垣島と周辺の島々が琉球に征服され、その琉球は薩摩藩に侵略され、ついには日本国の一部になってしまう。
いつの時代も弱い者は強い者に乗り込まれてしまう、という悲しいお話。
そして今、わが日本国は軍事的には米国の属国。
因果はめぐるのですねぇ。
革命を夢見る過激派からアナーキストとなった一郎の行くところ、事件は尽きないようです。
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