なぜか悲しき

文学

   今日は雨後曇りで、かなり涼しく、過ごしやすい一日でした。
 今年は空梅雨でしたが、なんだか梅雨が戻ってきたような。

 あぢさゐや なぜか悲しき この命

 久保田万太郎の句です。

 一般に儚さを感じるのは、桜と相場が決まっていますが。
 かの俳人は紫陽花に儚さと悲しさを見たようです。

 梅雨時に咲く珍しくも美しい花に、それを感じたんでしょうね。

 あまり自分を語らなった三島由紀夫も、紫陽花を好むと言う旨のエッセイがあります。

 文人に愛される花なんでしょうか。

 私は命のはかなさを紫陽花に感じる心性は持ち合わせてはいませんが、言われてみれば、梅雨時の花というのは、桜のような華やかさと逆の、いわば陰の美しさみたいなものがあるように感じます。

 その紫陽花ももう散りました。

 やっぱり悲しいような気がします。

久保田万太郎全句集
久保田 万太郎
中央公論新社


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