暑いなか、久しぶりに映画館に出かけました。
観たのは、「三島由紀夫VS全共闘」です。
これは東大の駒場キャンパスで行われた三島由紀夫と全共闘との討論会の記録と、当時を知る元全共闘や元盾の会の人々へのインタビューで構成された、ドキュメンタリーです。
なんだかNHKスペシャルのような映画でした。
私が生まれたのは1969年。
全共闘運動華やかなりし頃で、政治の季節なんて呼ばれていたそうですね。
当然、赤ん坊であった私には記憶がありません。
しかし、自民党や米国が本気で赤化を心配するほど、運動は盛り上がっていたようです。
三島由紀夫はボディビルや剣道で体を鍛え上げ、盾の会という民兵組織まで作って自衛隊へ体験入隊を繰り返すなど、左がかった連中とは正反対の立場を貫いていました。
日本文化の源は天皇制にあると断じてもいました。
その三島由紀夫が、千人もの全共闘学生が待つ講堂に単身乗り込み、討論会を行います。
屁理屈ばかりこねまわし、時には三島由紀夫を嘲笑し、挑発する全共闘学生たち。
大学生ですから仕方ないのでしょうが、幼稚な論理です。
それに対し、三島由紀夫は大真面目に、紳士的な態度で対応します。
議論はもどかしいほどに咬みあいません。
それは退屈なほど。
しかし討論会の最後に、三島由紀夫が学生たちに放った一言は、衝撃です。
「諸君の熱情だけは信じる」
という言葉。
右と左に分かれていても、政治に対する熱情だけは理解しあえるということでしょうか。
現に、三島由紀夫があのような形で自害したのち、新右翼に転向する新左翼が大勢いたと聞き及びます。
私は三島作品については、文庫本で手に入るものは全て読みました。
しかし、その擬古典的な文学作品群からは、とてもあのような政治活動を行うようには感じられません。
美的で、シニカルで、世の文学好きを熱狂させた作品。
人間の多面性を感じられた映画でした。