氷平線

文学






 今日は午後3時から緑内障手術のための手術前検査があります。
 千葉大学医学部附属病院の眼科に行かなければなりません。
 午後のみの半日休暇でも良かったのですが、面倒くさいので一日休みを取りました。

 午前中は読書をして過ごしました。
 読んだのは、桜木紫乃のデビュー作を所収した短編集、「氷平線」です。 

 いずれも北海道の道東を舞台にした短編群です。
 寒々しく、因習的で、あからさまな田舎の人間模様が描かれます。
 酪農の家族や漁村、理髪店などを扱って、鮮やかに人生の断面を切り取って見せます。
 道東というのがそういう場所なのか、田舎と言うのはそもそもそういうものなのか分かりませんが、やたらと簡単に不倫したり男女がくっついたり離れたりします。
 やや違和感を覚えます。
 あっさりした性交描写がどの作品にも描かれています。

 印象的な文章が紛れ込んでいて、それを見つけ出すと嬉しくなります。
 与えられて足りたという記憶がなければ、欲の落ち着き先など見つけようもないだろう。
 や、
 実際に殺すことと、生きている人間をいないものとして生きてゆくことに、どんな違いがあるだろう。
 と言った言葉。
 深く胸に刺さります。

 この作者の作品はいくつか読んでいますが、どれにも印象的な言葉があって、小説全体を楽しむとともに、それを探す冒険のような喜びもあります。

 なんでも北海道生まれの北海道育ちで、今も北海道に住んでいるそうです。
 100%、北海道が舞台の小説ばかり書いています。
 都会と言えば札幌が描かれるくらいで、大体は北海道の田舎を描いています。
 自分が知り尽くした場所だからこそ、執筆意欲が湧くのでしょう。

 寒々しい描写とむき出しの人間と大自然。
 それに憧れてしまうのは、東京で生まれ育ち、今は千葉市に住む、田舎暮らしを知らないが故でしょうか。