文学

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海も暮れきる

昨夜は焼酎をちびちびやりながら吉村昭の「海も暮れきる」という小説を読みました。 尾崎放哉の後半生を描いた小説です。 凄まじい後半生です。 東京帝国大学を卒業して保険会社の重役まで勤めながら、家族を棄て、流浪の生活をしながら句作を続ける姿が描かれています。 いくつかの寺の寺男や堂守をし、最後は小豆島の寺の小さな庵の庵主となります。 しかし収入の道が乏しく、わずかにお遍路さんにろうそくを売るばかりです。 酒飲みの放哉にはそれでは足りず、お寺の住職や島の俳句趣味のお金持ちに金を無心しては酒におぼれ、しかも酒乱のため島中の飲み屋から嫌われ、住職から庵の中で飲むのは構わないが、外で飲むことはまかりならん、と厳禁されてしまいます。 金の無心は遠く京都に住む俳人仲間や弟子にも向けられ、ほとんど一日中、金の無心の手紙を書いているありさまです。 その上肺病が進行し、ついには立って厠に行くこともできなくなり、近所の漁師の妻に身の周りの世話になってしまいます。 下の世話まで。 ついには骨の形に皮膚がはりついているだけのような、骸骨のような面相になってしまいます。 それでも句作だけは続け、金の無心と句作と酒、...
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追悼 丸谷才一

作家で翻訳家、批評家でもあった丸谷才一先生が87歳で亡くなられた、との報に接しました。 この人、英文学が出発点とあって、英国流のユーモアに富んだ、どこかシニカルな作風で、その思想性はともかく、私は好んで作品を読みました。 印象に残っているのは、「たった一人の反乱」と「裏声で歌へ君が代」ですかねぇ。 江藤淳などの保守的な文芸評論家から激しく攻撃されたりもしていたようですが、文学に政治性を持ち込んで自分の土俵に引きずりおろそうとした感じで、私は江藤淳のやり方を好みません。 私の出身大学でかつて助教授を務めていたことがあり、私が入学したときにはすでに退職してずいぶん経っていましたが、その厳しい講義は語り草になっていました。 私が教わった多くの教員は彼の講義を受けた経験があり、広い意味では私も孫弟子にあたるのかもしれません。 村上春樹のデヴュー作「風の歌の聴け」を新人賞選考委員として激賞し、彼を世に出したことも高く評価されています。 偏見の無い人だったように感じます。 惜しむらくは寡作だったこと。 エッセイや評論は多いのですが、キャリアが長いわりには小説が少ないのですよねぇ。 年齢的には大往生...
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村上春樹、残念

残念ながら、今年も村上春樹のノーベル文学賞受賞はなりませんでした。 私は彼のデビュー作「風の歌を聴け」から、すべての作品を読んでいます。 川端康成が日本の美を詠ってノーベル文学賞を受賞し、大江健三郎は真逆に欧米文学のような、日本語としては悪文の文学で受賞しましたね。 村上春樹はその二人とは違って、一種の無国籍文学とでもいうべき特徴を備えています。 だからこそ、世界中で受け入れられたのでしょうね。 「ノルウェイの森」や「1Q84」が代表作と目されているようですが、私は初期の「風の歌を聴け」・「1973年のピンボール」・「羊をめぐる冒険」の鼠三部作と、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」がお気に入りです。 とくに「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を高校2年生の時に読んで、自分がくだらぬ小説を書こうとするのは無意味なのではないかと思いました。 世の中にはこんなに才能豊かな人がいるのかと驚くとともに、こういう小説を書きたかったのに、先にやられてしまった、と嫉妬を感じました。 結局中途半端に2冊の短編集を世に問いましたが、私の強い自負とは違って、世に認められることはあり...
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人間関係

今日は神奈川県葉山町湘南国際村にある某大学で会議でした。 千葉市の自宅から75キロ。 湾岸を飛ばしてちょうど90分かかりました。 会議が2時間で往復が3時間。 移動で疲れてしまいました。 会議といっても、何かを決めるわけではありません。 同じような仕事を担当している者が全国から集まって、数人のグループに分かれてフリーディスカッションをするのです。 いわばガス抜きのようなもの。 言いたいことは言わせて貰いました。 じつは一見無意味に思えるこのような催しが、後で仕事に生きてくるということはよくあります。 日頃メールや電話でしかやり取りしていない同業者と直接会って話しをすることで、深い信頼関係が生まれ、ざっくばらんなやり取りができるようになります。 小泉改革による法人化前は、こういう機会が頻繁にありました。 それが競争原理を導入するとかで、国立大学や国立研究機関は、それまでの文部科学省による護送船団方式から、ライバルに変貌してしまいました。 職場から、人情味がなくなって、ギスギスした雰囲気が漂うようになりました。 人間は感情で動く生き物。 人間関係を重んじれば業務能率が上がることは日本人なら...
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ハンガー・ゲーム

今日は朝一番で映画館に出かけました。 観たのは、「ハンガー・ゲーム」。 近未来、12の地区が国家に反乱を起こし、長い内戦の末政府軍が勝利しました。 政府は反逆の過去を忘れないため、また国民に娯楽を与えるため、毎年、12の地区から少年と少女一人づつを、あるいはくじ引きで、あるいは志願を募ることによって選び出し、広大な森で最後の一人になるまで殺戮をくり広げる、というテレビ番組を放送しているのです。 まずは予告編をご覧ください。  わが国の映画「バトル・ロワイヤル」シリーズと感じが似ていますが、「ハンガー・ゲーム」では残酷描写は抑え目で、アクションや殺し合いの緊迫感よりも、戦わざるを得なくなった少年少女たちの悲しみが全編を覆います。 しょうしょうだれるほどの長い前ふりと、意外なほどあっさりした戦闘シーン。 なんだか拍子抜けがします。 この手の映画で140分は尺が長すぎたのではないかなと思います。  後編が製作中らしいですが、おそらく私は観ないでしょう。ハンガー・ゲーム(上) (文庫ダ・ヴィンチ)河井直子メディアファクトリーハンガー・ゲーム(下) (文庫ダ・ヴィンチ)河井直子メディアファクトリ...
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