文学 ゆで卵
元ジャーナリストで芥川賞作家の辺見庸は、地下鉄サリン事件に遭遇、サリンを吸っているのだそうですね。 幸い一命を取り留め、その時の体験を小説にしています。 タイトルは「ゆで卵」。 不思議なタイトルだなぁ、というのが率直な感想でした。 地下鉄サリン事件の体験談が、「ゆで卵」なんてねぇ。 で、読んでみると、なるほど、ゆで卵をいくつも喰らっています。 地下鉄サリンという異常な体験をした後、家に帰り着き、その事件がどういう背景のもとに行われたのか、また、何者によって引き起こされたのか、何も情報がないまま、修羅場と化した地下鉄日比谷線を呆然と抜け出し、家に帰ってしたのは、ゆで卵を食うことでした。 サリンの異臭よりも、むせかえるようなゆで卵のにおいのほうが強烈だなぁ、などと呑気なことを考えつつ。 意味不明の異常事態が起きた場合、人は物を食うか寝るか性交するか、とにかく原初的な行動をとるのかもしれませんね。 本能的に生きるための栄養や休養を欲したり、種の保存を目指したりするのでしょうか。 食うシーンを、ぽくぽくと食う、と表現していたのが印象的でした。 一般に、小説家がやってはいけないこととして、造語...