文学 新入生に読ませたい
数年前でしたか、東京大学教員に、学部問わず、新入生に読ませたい本は何か、というアンケートをとったことがありました。 一位をとったのが、ドフトエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」でした。 この結果をどう考えればいいんでしょうね。 俗物の地主と、三人の息子をめぐる物語。 長男は放埓な退役軍人、二男はニヒルな無神論者、三男は純真で真面目な修道僧。 彼らが異性の問題、信仰の問題、社会制度の問題、ついには親殺しの問題にまで手を広げた、小説に詰め込める要素をすべて詰め込んだ総合小説ともいうべき大作です。 骨太な大作ではありますが、私には毒気が強すぎたようで、読後しばし落ち込みました。 作り物めいた虚構の美を歌う幻想文学や浪漫文学に慣れ親しんだ私には、あまりに鋭利な刃だったのです。 東大の先生が学部関係なくこれを読めということは、過酷な、身も蓋もない現実を見据えて、力強く生きよということなのでしょうか。 それはあんまり学生を買い被ってはいませんかねぇ。 いやなものからは目を背けたいのが人の性。 それをことさらに取りだして並べなくたって、生きているだけで分かってきましょう。 私が東大の先生なら、迷う...