文学

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桜にあけて

例年より一週間ほど遅かったでしょうか。 桜が咲き始めました。 記録的な猛暑、そして平凡な冬、そして1,000年ぶりという東北の震災と津波。 それら自然の猛威を受けながらも、今年も桜は咲きました。 花は桜木、人は武士。 桜は日本人の自然受容の象徴的存在です。 寒い日が続いても、我慢していればやがて花は咲く、そういった忍耐をもって、私たち日本人は自然に順応することを選び、自然を克服しようとは思わなかったのですね。 桜の季節は一年で最も華やかで浮かれ騒ぐころ合い。 新入生歓迎コンパで毎年死人が出るほどの狂騒ぶりです。 春の夜は 桜にあけて しまひけり 俳聖、松尾芭蕉もこの時期は桜に明け暮れたようです。 私も今週末は花見に繰り出したいものです。芭蕉全句集 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)雲英 末雄,佐藤 勝明角川学芸出版 ↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
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明治大帝の御製

世と共に かたりつたへよ 国のため いのちをすてし 人のいさをは 明治天皇の御製です。 国家国民のために命がけで尽くした人の名誉は後の世まで語り伝えたい、というほどの意かと思います。 今、まさに原発事故や遺体の収容、がれきの除去など、危険な任務に就いている人々こそ、語り伝えなければならないのでしょう。 逃げることばかり考えている私からみれば、頭がさがります。世の中の 人のつかさとなる人の 身の行ひよ ただしからなむ これも明治大帝の御製です。 人の上に立つ人は身の行いをただしくしなければならない、といった意味かと思います。 現在の危機にあって、民主党政権や東京電力幹部には、耳が痛いんじゃないでしょうか。やすくして なし得がたきは 世の中の ひとの人たる おこなひにして またもや明治陛下の御製です。 簡単なようで人間らしい行いをすることはむずかしい、と嘆いています。 しかし今回の震災で被災者が示した態度は、ひとの人たるおこなひと呼んでよいのではないでしょうか。明治天皇は和歌や読書が大好きだったとか。しかし公務が忙しく、なかなか古今の書物をひもとくことができなかったようです。 最後にそんな...
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花冷え

今、私の職場に咲く桜は、3分咲きか4分咲きといったところでしょうか。 花は咲いても昨日・今日と寒いですね。 職場は3月下旬から暖房を停止するので、仕事机に向かっていても凍える心地です。 こういうの、花冷えって言うんでしょうねぇ。 どうせ花冷えなら、暖めの酒でも片手に、花の下で酔いたいものです。 そうはいっても宮仕えの身。 全身全霊で職務に精励しなければなりません。 み吉野の 山辺に咲ける桜花 雪かとのみぞ あやまたれける          「古今和歌集」にみられる紀友則の歌です。 桜を雪と見まがうなんて、よっぽど寒かったんでしょうねぇ。 吉野の山は都よりも寒くて、田舎らしい寒々した感じがあったんでしょうね。 でも春の寒さは一睡の夢。 信じられないほどのぽかぽか陽気がちかく訪れるでしょう。古今和歌集 (岩波文庫)佐伯 梅友岩波書店 ↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
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姥捨

震災でこれほど多くの人々が無念の死を遂げ、また遂げつつある様をみて、私は古く、姥捨山の伝説を思い出しました。 104歳の老婆が避難所に逃げ込んで、逃げ込んだときには歩けたのに、翌朝には足腰が立たない状況になっていたとか。 それでも命はどうにか長らえています。 長幼の序はわが国の美風。 老人を救助するのは当然のことです。  にも関わらず、かつて信濃国更級では姥捨が行われていたと、多くの書物にあります。 「楢山節考」は当時の山村の貧しい暮らしぶりを寒々と描き、白骨でいっぱいの山中に母親を棄てに行く緒方拳演じる主人公が哀切でした。 わが心 慰めかねつ 更級や 姥捨山に 照る月を見て 「古今和歌集」に所収された読み人知らずの歌ですが、これは「大和物語」にも見られます。 悪妻に唆されて伯母を山中に捨てた男が、後悔して詠んだ歌です。 また、紀貫之は「拾遺和歌集」に、次のような和歌を残しています。 月影は 飽かずみるとも 更科の 山の麓に ながゐすな君  どちらも姥捨の里である更級の月を題材にしています。 面白いのは、更級の月は妖しい輝きを放っているというのに、その月の美しさは心を慰めない、または長...
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炎中(ほなか)の桜

テレビでまるで終末のような惨状を呈す地震や津波、火災の被害を見て、私の心は沈むとともに、いっそ完全に世界を焼き尽くす災害が起こればよいのに、と矛盾した気持ちになる私を観察して、ぞっとしたのでした。ほろびゆく 炎中(ほなか)の桜 見てしより われの心の修羅 しづまらず 皇室の和歌指南にして現代最高の歌人、岡野弘彦の歌です。 「バグダッド燃ゆ」という歌集に載っています。 イラク戦争の惨劇と、自身が体験した太平洋戦争中の空襲を重ね合わせて、格調高く、的確な言葉で美しく、悲劇を歌い上げています。 ストレートで稚拙ないわゆる反戦歌とは一線を画すものです。 反戦も結構、反核も結構、しかし和歌というものは、あくまでも美しくなくてはなりません。  岡野先生、「サラダ記念日」が流行ったとき、俵万智と比較して論じた評論が現れて、激怒していましたっけ。 それだけ自分の歌に強い自負があったのでしょう。 災害をも浪漫的な芸術に昇華させてしまうその歌心に、感服したのでした。バグダッド燃ゆ―岡野弘彦歌集岡野 弘彦砂子屋書房サラダ記念日―俵万智歌集俵 万智河出書房新社 ↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
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