文学

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花のした

桜が咲きました。 私は桜を見ると、憂鬱になります。 長いこと会計の仕事をしていて、桜の時期は決算と重なり、過重な労働を強いられたためでしょうか。桜を見ると、条件反射のように、山のような伝票や、深夜残業、それに犯罪すれすれ、というか犯罪そのもののような、日付の改ざんなどの処理を思い出すのです。もっとも、それら犯罪行為は、日本国中のお役所で日常的に行われていることでもあります。それはむしろ、犯罪というより法制度の欠陥と言ったほうがよいでしょう。 しかし、今は、ひま。 職業訓練には通っていますが、温水プールで戯れているようなもの。荒波を乗り越えて海で泳ぐのとはわけが違います。 この物狂おしい春を、やり過ごさなくてはなりません。  ねかはくは 花のしたにて 春しなん そのきさらきの もちつきのころ  有名な西行法師の歌です。この歌ほど、多くの日本人の心をとらえたものはありますまい。 桜の下には死体が埋まっている、と言ったのは梶井基次郎でしたか。 春と花には、死のにおいがつきまとっています。 むしろ精神病者にはお似合いの季節かもしれません。
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ヒトラー

ジョン・トーランドの名著「アドルフ・ヒトラー」を読みました。 この独裁者に関する書物は山のようにありますが、これがもっとも充実していて、客観的なのではないかと思います。 しかし私は、この冷静なアメリカ人の手による伝記からも、ナチへの秘かな憧れを感じ取りました。 もちろん、ナチズムの犯罪は別にして、戦国武将に憧れるように、ナチズムに憧れたところで、ちっともおかしなことではありません。あのスタイリッシュなSSの制服や、深夜、篝火をたいての党大会など、私も美しいと思います。 なぜ、激しく高揚した肉体と精神の運動は、破滅に向かっていくのでしょう。しかもそれは、道徳を超越した犯罪行為に結びつきます。ポル・ポトしかり。連合赤軍しかり。 私は精神を病む前から、こういった運動に強いシンパシーを感じてきました。 なにしろ民主主義は面倒くさくて、時間がかかって、格好悪いですから。 私はしかし、群れること、集団の利益のために個を殺すことが、何より嫌いなのです。アドルフ・ヒトラー 1 (集英社文庫)ジョン・トーランド,永井 淳集英社アドルフ・ヒトラー 2 (集英社文庫)永井 淳集英社アドルフ・ヒトラー 3 (...
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もの狂い

すっかり春めいてきました。 春は、もの狂いの季節。 発情した猫の声もすさまじく、もうじき桜は狂ったように咲きみだれ、散りみだれます。 春の椿事とか称して、浮かれた愚か者が徘徊します。 猫と同様、人間も性欲高まる季節。私は精神病を発症してから、不能に堕していますが、それでも、人肌恋しい季節ではあります。 恋びとは 土龍(もぐら)のように 濡れている モダニズム俳句の代表的俳人、富澤赤黄男の句です。 恋人をもぐらに例えているのがおもしろいですね。 そして、どこか肉感的な感じがして、リアルな、どうかすると悪趣味な印象さえ受けます。しかしそれが、かえって春のもの狂いを連想させて、趣深いのでしょう。
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早朝覚醒

今朝は四時に目が覚めてしまいました。早朝覚醒ですね。これは精神疾患の症状の一つで、時々現れます。そんなときは無理に寝ようとしないで、起きてしまうに限ります。 静かに、「角川春樹句集」など読んでいます。角川春樹の句は、どこか荒らしくて、俳句らしい枯れた感じがなく、面白く読めます。 例えば、 黒き蝶ゴッホの耳をそぎにくる 芸術家の狂気を黒い蝶に例えて、不気味です。  また、 少年期晩夏の海に銃を撃つ 少年期のいらいらした感じがよく出ています。  さらに、 鳥葬の人肉きざむ秋の山 秋の山というのどかなイメージと人肉きざむというおどろどろしいイメージが対比をなしています。 「角川春樹句集」は驚きに満ちていて、まだ暗い早朝の私を、震えさせるのです。地果て海尽きるまで―角川春樹「魂の一行詩」自選一〇〇角川 春樹,金田 石城角川春樹事務所
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お雛様

明日は雛祭りですね。まだ寒いですが、春の気配が感じられます。 実家では、妹がいたため、毎年豪華な雛飾りでいわっていました。 我が家のお雛様は、ぺこちゃんとぽこちゃんです。これはこれで、味わいがあります。  雛流し 松籟(しょうらい )これを悼みけり 松籟は松にふく風と、その音です。 もともとは川に流す紙製のお雛様だったそうで、雛祭りの終わりを詠んだ安住敦の句です。なんとなく春の物憂さが出ていて、秀句ですね。 不産女(うまずめ)の 雛かしづくや 哀れなる 嵐雪の句です。これはお目出度いお雛様の句としてはふさわしくありませんが、子を授かることのなかった女と美しいお雛様との対比が見事です。 お雛様の句は、格調高い、堂々たるものが多いですが、私は、上記2句のような、もの悲しい感じの句こそ、春の愁いをたたえて、味わい深いものと思います。
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