文学

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木枯らし

木枯らしが吹きましたね。いよいよ冬が近づいています。 ボードレールは、「人工楽園」で「カナダのような冬、ロシアのような冬であればあるほどよい。それだけ彼の住む巣は暖かく、甘美に、いとしいものとなろう」と、寒い冬を賛美しています。 極寒のなか、暖かい部屋でくつろぐのは至福のひと時ですね。 本朝では、蕪村が、「屋根ひくき宿うれしさよ冬ごもり」と詠んでいます。 見事なまでの、ボードレールとのシンクロですね。 さらに、三好達治は、 「太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。」 と、歌っています。 18世紀の俳人、19世紀ヨーロッパの詩人、近代の日本詩人と、冬ごもりを幻想的なもの、暖かいものとして憧憬するその精神は、脈々と続いています。 冬ごもりの幻想的風景は、家にこもることを介して、己れの内面に深く沈滞するかのごとくです。 冬は酒が旨くなる、というのも、この冬ごもりの暖かさに由来すると言えましょう。 人工楽園 (角川文庫クラシックス)与謝蕪村の本三好達治
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少女の友

昨日は弥生美術館に「少女の友」展を観に行きました。 「少女の友」は、明治41年から昭和30年まで、実業乃日本社から刊行されていた少女向けの雑誌です。 美しい表紙、川端康成や吉屋信子などの充実した執筆陣による、少女の心のひだや女学生生活を描いた小説、さらには投稿欄や付録の充実など、今見ても豪華な内容です。 今でも、年配の方のみならず、多くの若いファンを惹きつけています。 ただ、戦時中、軍の広報雑誌のようになってしまったのは、展示を見ていても痛々しい感じがしました。 時代が暗ければ暗いほど、少女は幻想の美に酔いたいものなのに。 美術館には、和服の女性や女子高生など、多くの女性が訪れていました。 中年男の私は、場違いに苦しみながら、美しいイラストや時代背景の解説に酔いました。『少女の友』創刊100周年記念号 明治・大正・昭和ベストセレクション実業之日本社,遠藤 寛子,遠藤 寛子,内田 静枝実業之日本社
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霧の中

激しい雨が降っていますね。こんな秋の日には、怖ろしい事件が起きそうな予感がします。 もう三十年も前になりますか、パリで日本人留学生がオランダ人の女子大生を殺害のうえ肉を食らう、という「羊たちの沈黙」のような事件がありました。犯人の佐川一政はフランスの裁判で心神喪失が認められ、無罪となって日本に帰ってきました。 そして書き上げたのが、「霧の中」です。事件のことを、グロテスクなまでに、細々と描写しています。 なぜこんな文章が書ける人が心神喪失なんだ、と中学生ながら不思議に思った記憶があります。そのうえ、カニバリズムの大家を自称して、様々な評論活動を行っています。判決は確定していますから、無罪である以上、法律的に何の問題もないのですが、遺族の感情を考えると、いやな気持ちになります。 いやな気持ちになりたいときには、お勧めの一冊です。霧の中佐川 一政彩流社
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死との対面

安岡章太郎のエッセイ「死との対面」を読みました。 この人の小説は、中学生の頃、熱心に読みました。洒脱な作品が多いな、と感じました。 現在、90歳ちかくですが、まだ現役ですね。たいしたものです。 「死との対面」では、老作家の徒然の物思いが、語られています。私の倍以上生きている人の言葉には、重みがあります。 様々な病気を克服し、長生きするにつけても、旧友が次々亡くなっていく、いよいよ次は自分の番だ、という覚悟のようなものが感じられます。 猫だって長生きすれば猫又になるとか。それなら作者はもはや仙人の域でしょう。死との対面―瞬間を生きる安岡 章太郎光文社
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枕草子に、「秋は夕暮れ。夕日のさして山のはいとちかうなりたるに、からすのねどころへ行くとて、みつよつ、ふたつみつなどとびいそぐさへあはれなり。まいて雁などのつらねたるが、いとちひさく見ゆるはいとをかし。日入りはてて、風の音むしのねなど、はたいふべきにあらず」 と、あります。 秋も十月なかばを迎えると、日の暮れるのがやけに早く感じますね。秋刀魚もそろそろ終わり。すべてが冬に向かって、突き進んでいるかのごとくです。 そして冬がしつこいのに比べて、秋の短いこと。  今日はなんだか、憂愁のようです。 こんな秋の日は、燗酒がひときわ旨いというものです。枕草子 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)角川書店角川書店
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