文学

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静かな爆弾

昨日、病院から帰って、吉田修一の中篇を読みました。 「静かな爆弾」です。静かな爆弾 (中公文庫)吉田 修一中央公論新社 テレビ局でドキュメンタリー製作の仕事をしている早川。 彼は神宮外苑の1LDKのアパートで一人暮らし。 神宮外苑に散歩に出かけ、響子という耳の不自由な女性と知り合いになります。 このあたり、作者の芥川賞受賞作「パーク・ライフ」を彷彿とさせます。 かの作品は日比谷公園で出会った男女の恋模様を描いたものでした。パーク・ライフ (文春文庫)吉田 修一文藝春秋 早川はバーミャンの大仏遺跡が爆破された真相を追って、中東と日本を行き来する忙しい日常を送っています。 そんな中、早川は響子との付き合いを始めます。 神宮外苑や青山、千駄ヶ谷あたりを舞台にして、二人の、静かな恋が進行します。 響子は耳が不自由であるがゆえ、通常の言葉によるコミュニケーションが取れません。 簡単な言葉なら、口の動きで読み取ることができますが、ちょっと複雑になると筆談に頼らざるを得ません。 最小限の言葉で、効果的にコミュニケーションを続けるうちに、言葉に出さず、紙に書くことによって、そこには妙に冷静な雰囲気が漂...
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父からの手紙

昨日に続いて、今日もとても涼しい日です。 でもどんよりと曇って、今にも降りそうな外を見ていると出かける気にならず、午前中は読書をして過ごしました。 読んだのは、「父からの手紙」というミステリーです。父からの手紙 (光文社文庫)小杉 健治光文社 妻子を捨てて別の女性の元に走った中年男。 中年男から、長女とその弟の二人の誕生日に、必ず手紙が届きます。  曰く、遠くから君たちの幸せを願っている、といったようなもの。 長女が父の親友が経営する町工場が経営難に落ち込んでいることを知り、お金持ちの経営コンサルタントとの望まない結婚に踏み切ろうとしたり。 弟がそれに激しく反発したり。 もうひとつの物語として、警官を殺害した男の物語が語られます。 この二つの物語が、後半に至って接点を持ち、同時に進行していくという構成になっています。 ラストはあっと驚くもので、そこはミステリーとして優れていますが、かなり設定に無理があります。 親子の愛、男女の愛、家族愛、そういった様々な愛情が、ゆがんだ行動を起こさせる、切ない物語に仕上がっています。 小説だから仕方ないとはいうものの、様々な愛情を紡ぎだすには、ここまで...
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忘れられた巨人

今日も暑くて出かける気にならず、読書をして過ごしました。 読んだのは日系英国人作家、カズオ・イシグロの最新作、「忘れられた巨人」です。忘れられた巨人Kazuo Ishiguro,土屋 政雄早川書房 舞台はアーサー王没後間もないブリテン島。 ある集落に住む老夫婦は、昔出て行った息子に会うため、旅に出ることを決意します。 旅といっても、当然徒歩で、しかも当時のブリテン島での旅は大変危険なもの。 強盗や追いはぎ、鬼や妖精が出没するのです。 当時、ブリテン島は霧=雌竜の息が充満し、人々はそのせいで様々なことを忘れてしまいます。 島には、言葉も神も習慣も違うブリトン人とサクソン人が住んでおり、過去、激しい戦いを繰り広げてきましたが、今はつかの間の平和が訪れています。 旅の途中、老いたアーサー王の騎士や、戦闘能力抜群の、ブりトン人に育てられたサクソン人の戦士、サクソン人の少年、キリスト教の僧など、多くの人々に出会い、助けられたり窮地に追い込まれたりします。 要するにファンタジー仕立てですね。 ただし、この作者らしい静かな筆致で、ファンタジーらしい活劇とは一線を画しています。 民族の対立と和解、そし...
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6月31日の同窓会

昨日は読書などしてゆっくりと過ごしました。 読んだのは、「6月31日の同窓会」です。6月31日の同窓会真梨 幸子実業之日本社 もちろん、暦上、6月31日という日は存在しません。 神奈川県の某市にある私立の名門女子校。 この学校には、6月31日の同窓会の通知が来ると、お仕置きされる、という噂があります。 89期生で28歳になるOGたちに、次々とその通知が届き、実際に死んでしまう者が多数出ます。 じつによく人が死にます。 怯えるOGたち。 高校時代の思い出と、28歳の現在を交差しながら描き、そこそこ読ませます。 しかし残念ながら、印象は安っぽいホラー仕立ての少女小説の域を出ていません。 お気楽に楽しめましたが、もう少し重たい物を読んでみたくなりました。にほんブログ村 本・書籍 ブログランキングへ
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悪母

昨夜は焼酎のロックをちびちびやりながら、サスペンス小説を読みました。 帯には、最恐サスペンスと謳っていましたが、それほど恐くはなかったですね。 春口裕子の「悪母」です。悪母春口 裕子実業之日本社 平たく言えば、ママ友同士の人間関係のゆがみを描いたものですが、LINEやらフェイスブックやらツイッターやらのSNSを駆使して嫌いなママ友を攻撃したり、一人だけLINEから外したり、なんだか陰湿なんですなぁ。 ママどころかパパですらない私には感情移入しにくいストーリーでしたが、一気に読んだということは、それなりに面白かったんでしょうね。 古今東西、女同士というのは問題が絶えないようです。 私も就職して25年、女性同士の関係性には苦労しています。 対立するグループの双方から悪口を吹き込まれたり。 幸い私は男なので、そういうのからは常に中立でいられはしますが。
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純平、考え直せ

昨日は雨に閉じ込められましたが、今日は暑さに閉じ込められました。 私は夏が一番嫌いです。 不快な季節がやってきましたねぇ。 今日も読書をしてすごしました。 奥田英朗の「純平、考え直せ」を一気に読みました。純平、考え直せ (光文社文庫)奥田 英朗光文社 文庫本で300ページほどですが、ページをめくる手が止められないほど、抜群に面白いエンターテイメントでした。 坂本純平は21歳、歌舞伎町を闊歩する下っ端ヤクザ。 歌舞伎町では、水商売のおねぃさんやオカマ、ホストにいたるまで、気の良い若者ということでマスコットのように扱われる人気者でもあります。 格好良い兄貴分に心酔して、何かと兄貴分の真似をしたがります。 ある時、親分から鉄砲玉を頼まれ、純平は躊躇することなくそれを引き受けます。 娑婆で3日間、豪遊しろと、親分と兄貴分から数十万円をもらいます。 三日後の明け方、敵対する組の幹部を撃ち殺す予定です。 純平は新宿プリンスホテルのスウィートルームに宿泊し、焼肉を食ったり鮨を食ったり。 で、三日間の間に不思議な出会いをいくつも経験します。 インチキ通販でオペレーターをする同い年のアバズレや、売り専門...
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浮世の画家

雨の土曜日。 昼寝をしたり読書をしたりして、静かに過ごしました。 読んだのは、日系英国人作家、カズオ・イシグロの「浮世の画家」。 1940年代後半の日本を舞台にした物語です。 主人公は、老いた画家。 戦前戦中、この画家は日本精神を鼓舞する画風で、たいへんな名声を得ました。 しかし戦争が終るや、彼のかつての功績は、むしろ軍国主義に迎合したものとみなされるようになるのです。 老いた画家に独り語りの手法で、物語は進みます。 戦後の現在が語られたり、修行時代が語られたり、栄光の時代が語られたり、さかんに話が飛ぶので、少々読むのに難儀します。 老いた画家は、晩年に到ってかつての名声を失いながら、その時々で信念に基づいて行動したことだと、過去を反省する様子は見られません。 ラストに到って、かつての同志が亡くなり、彼は若々しいサラリーマンたちの明るい笑顔を見ながら、新しい時代は祝福されたものになるだろうと、微笑むのです。 この独り語りの技法はかなり曲者です。 事実は事実として描かれず、必ず老画家のフィルターを通して語られるのですから。 読者はそれに戸惑いながらも、時代に翻弄された一個の老人の魂の遍歴...
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暑苦し

あつ苦し 昼寐の夢に 蝉の声 夏目漱石の句です。 今日の首都圏はどうやら猛暑日になる見込み。 事務室のなかは冷房が効いて快適ですが、いったん廊下にでれば、湿気を含んだ暑苦しい空気が澱んでいます。 いよいよ過酷な季節が始まったようです。 蝉ももうじき喧しく鳴き出すでしょう。 夏は苦手です。
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サウス・バウンド

奥田英朗の長編小説、「サウス・バウンド」を読み終わりました。 爽やかな読後感ですが、すぐに内容を忘れてしまいそうな感じもします。 小学六年生の次郎は中野在住。 両親と姉と妹の5人暮らしです。 で、父親の一郎というのがとんでもない男です。 元過激派で、警察でも有名な暴れ者。 逮捕歴もあります。 185センチの大男で、何より国家が大嫌い。 働きもせず、小説なんか書いています。 母親は喫茶店を経営し、一家を支えています。 母親は夫の一郎に心酔しているご様子。 中野では、不良少年と次郎が戦ったり、友人と遊んだり、少年小説の趣を呈しています ところが、父親が突然西表島に移住して自給自足の生活をする、と言い出し、実際に一家は引っ越します。 ここでもリゾート開発をめぐって一郎は大活躍。 ついには騒ぎを起こし、子供たちを置いて夫婦で波照間島に逃げてしまいます。 この小説で印象深いのは、次郎という少年の成長とともに、沖縄の歴史がさりげなく語られることでしょうか。 かつては琉球王国に属していなかった石垣島と周辺の島々が琉球に征服され、その琉球は薩摩藩に侵略され、ついには日本国の一部になってしまう。 いつの...
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ごろごろ

今日は一日ごろごろしていました。 朝は7時半に起きて風呂。 たっぷりとつかり、一週間の疲れを癒しました。 朝飯は納豆とハムエッグで、茶碗に1膳の白飯。 これで腹いっぱいです。 その後リビングでまた小一時間ほど眠り、先週購入し、裾丈の直しが終わった夏物のスラックスを取りに千葉三越へ。 10時半には帰宅して、小説を読んだりして午前中を過ごしました。 昼は近所のイタリアンでパスタセット。 その後またもやリビングで昼寝。 いくらでも眠れる感じです。 今宵は中トロとヒラメの刺身を購入したので、それで一杯やる予定です。 明日はお祝い事で実家に行く予定。 クールビズのこの時季、スーツにネクタイとは冴えませんが、お目出度い席のこととて、少々の窮屈は我慢しましょう。
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日の名残り

英国の老執事を描いたカズオ・イソグロの小説「日の名残り」を読み終わりました。日の名残り (ハヤカワepi文庫)Kazuo Ishiguro,土屋 政雄早川書房 スティーブンスはダーリントン・ホールと呼ばれる大きなお屋敷に仕える執事。 時代は1956年の7月。 何十年もこのお屋敷の主、ダーリントン卿に仕えてきた名執事です。 ダーリントン卿が亡くなり、屋敷は執事込みで売りにだされ、米国の実業家によって買い取られます。 米国人は英国貴族と違って気さくな人柄で、屋敷を留守にする間、スティーブンスに車を貸すから旅行に行って来いと勧めます。 スティーブンスは旅行などしたことがなく、戸惑いますが、新しい主の勧めにしたがって、一週間ほどの自動車旅行へと出かけます。 旅行の様子が描かれるとともに、1920年代から1956年の現在までの様々な思い出が語られます。 第一次大戦、第二次大戦、二つの世界大戦を経て、かつての日の沈まない帝国は、すっかり落ちぶれてしまいます。 女中頭がスティーブンスに寄せる密かな思い、若い女中と召使の駆け落ち、ナチ高官と英国政府高官の深夜の密談など、お屋敷では様々なことが起こり、そ...
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橋を渡る

体調が良くなって、吉田修一の「橋を渡る」を一気に読みました。 不思議な小説です。橋を渡る吉田 修一文藝春秋 「春ー明良」、「夏ー篤子」、「秋ー謙一郎」と、それぞれ異なる主人公の物語が綴られます。 そして最終章でそれぞれが繋がる、というパターンの群像劇で、この作者の作品としては珍しくない構成です。 しかし、「そして、冬」、「エピローグ」にいたって、びっくり仰天。 それぞれの物語の主人公が繋がることはたしかなのですが、その舞台が70年後の近未来という設定です。 うーんと、うなりました。 面白いといえば面白いですが、描かれる70年後があまりに突飛で、面食らいます。 「秋ー謙一郎」で登場した学者が研究中の、IPS細胞から精子と卵子を作り出し、それを合わせて人間の生み出すという技術が開発され、それによって生み出された人間はサインと呼ばれ、明らかに差別されています。 また、70年後には100歳くらい当たり前ですが、サインは40歳くらいまでしか生きられません。 正直、どの人物にも感情移入できませんでした。 吉田修一という作家、どうもむらっけがあるようです。にほんブログ村 本・書籍 ブログランキングへ
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裏切り

今日は裏切りの日なんだそうですね。 なんでも本能寺の変で明智光秀が織田信長を裏切った日だから、だそうで。 裏切りという行為、おそよあらゆる宗教や道徳律の中でも、最も卑しい行為とされているようです。 それでいて、人は裏切りという行為を止めることはありません。 重大な裏切りから、ちょっとしたものまで、じつにさまざまです。 キリスト教の司祭が教えを捨てるという重大な裏切りを描いた小説に、遠藤周作の「沈黙」があります。 映画化もされ、近々、マーティン・スコセッシ監督がリメイク版を製作すると聞いています。沈黙 (新潮文庫)遠藤 周作新潮社沈黙 SILENCE 篠田正浩,遠藤周作,遠藤周作東宝 江戸初期、日本に布教に来ていた高名な司祭であるフェレイラが転んだとの報告を受けて、彼の弟子であった若い司祭、ロドリゴが日本に密入国します。 密入国の手引きをしたのがキチジロー。 ロドリゴはキチジローの密告によって、長崎奉行に捕えられます。 キチジローはこの裏切りを悔い、泣き叫んでロドリゴへの面会を望みますが、かないません。 ちょっとキリストを裏切ったユダを連想しますね。 ロドリゴは夜中、激しい鼾に悩まされま...
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ナオミとカナコ

昨夜、奥田英朗の長編「ナオミとカナコ」を読了しました。 知りませんでしたが、ドラマ化もされているようです。 この作者の作品はかなり読んでいます。 大きく分けて、ユーモア小説と、犯罪に材をとったものに分けられるかと思います。 しかし犯罪の小説もいわゆる謎解きを主眼とする推理小説ではなく、一種の心理劇の様相を呈し、そこはユーモア小説と一脈通じるところです。 で、「ナオミとカナコ」は犯罪を題材にしたもの。 大手百貨店に勤めるナオミは東京で独り暮らし。 学芸員になりたかったナオミは、百貨店が運営する美術館での勤務を望みますが、29歳になる今もかなえられません。 ナオミの学生時代からの親友、カナコは大手都市銀行勤務のエリートサラリーマンと結婚し、専業主婦におさまりますが、夫はDV野郎で、カナコはいつもどこかに傷や痣を負っています。 久しぶりに会ったナオミとカナコ。 ナオミがカナコの顔の痣に気づき、問い詰めると、カナコは夫の暴力癖を告白します。 それに衝撃を受け、憤慨するナオミ。 離婚を勧めますが、カナコはそんなことを言い出したら暴力どころか殺されてしまう、とおびえるばかり。 百貨店の大得意で認知...
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わたしを離さないで

昨日は一日かけて、日本生まれの英国人作家、カズオ・イシグロの長編「わたしを離さないで」を一気に読了しました。 読み始めたら、I can’t stop という感じで、引き込まれました。 ヘールシャムという特別な施設で育った女性、キャシーの独白という形式で、物語は進んでいきます。 ヘールシャムというのはいかなる施設なのか、最初は分かりません。 そこで保護官と呼ばれるどこかぎこちない態度の教師たちに、もっぱら絵画や詩の製作を教わる生徒たち。 彼らの将来は、すでに決まっています。 それは介護人と呼ばれる仕事に就き、その後は提供者と呼ばれる存在になること。 ネタバレになってしまいますが、ミステリーではないので良いでしょう。 ヘールシャムとは、臓器提供のために生み出されたクローン人間の教育施設なのです。 クローン人間とはいえ、そこは人間。 嫉妬や妬み、恋愛、人間関係の悩みなど、当たり前の人間の感情が、精緻に、しかも抑えた筆致で淡々とつづられます。 提供者などになりたくない、普通に働きたい、という切実な悩みが描かれたり、真に愛しあっているカップルは、それが真の愛だと証明されれば、提供を猶予される、な...
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