文学

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春たつ

今日は立春。 まだまだ寒いですが、今日から春だと言われると、なんとなく、日差しが強くなったように感じるから不思議です。 春たつと いふばかりにや み吉野の 山もかすみて 今朝はみゆらむ 壬生忠岑の歌です。 立春と言われると、寒い吉野の山も霞んで、春めいて見える、といったほどの意かと思います。拾遺和歌集 (新 日本古典文学大系)小町谷 照彦岩波書店 今日の私の心境とシンクロしているようで、ふと、思い出しました。  人間の感情なんて千年前も三千年前も、そう変わらないものでしょう。 そうであればこそ、私ははるか時を越えて、歌人や俳人が残した歌や俳句にシンクロすることがよくあるのです。にほんブログ村 人文 ブログランキングへ
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沈黙の町で

結局昨夜は全然雪が降らず、拍子抜けしました。 そんな中、女友達二人と 山王パークタワーの中華料理屋で高級中華に舌鼓を打ち、二次会は隣接するキャピタル東急ホテルのメイン・バーでカクテルなどいただき、古い女友達と旧交を温めました。 女友達のうちの一人は着物姿。 もちろん私も。 奇妙な3人に見えたことでしょう。 夏と冬に開催してきた会を、今後は季節の良い春と秋に変えようと約し、別れました。 この二人と一杯やるのはじつに愉快です。 今日は静かに読書をして過ごしました。 奥田英朗の長編「沈黙の町で」です。 中学2年生のいじめられっ子が、ある時死体で見つかります。 死因は転落死。 自殺なのか、事故なのか、事件なのか。 この件を巡り、いじめられっ子の母親、いじめっ子たち、いじめっ子たちの親、その他の生徒たち、警察、検事、新聞記者など、多くの視点でそれぞれの思いが語られ、少しづつ、真実が明らかになっていきます。 人が一人死んでいるのに、わが子だけが可愛い親たち、責任逃れをする教師たちなど、人間の醜い真実が明らかにされていきます。 この作者はどちらかというとユーモア小説を得意としますが、こんなシリアスな...
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着ぶくれて

昨日は大寒でした。  正月までは変に暖かく、今年は暖冬だと思っていましたが、ここへ来て寒さが急激に厳しくなりました。 辛い季節です。 大寒と 敵(かたき)のごとく 対(むか) ひたり  富安風生富安風生 阿波野青畝集 (朝日文庫―現代俳句の世界)富安 風生,阿波野 青畝朝日新聞社 私は敵とまでは思いませんが、そう思いたくもなる寒さではあります。 むしろ、同じ俳人の、 着ぶくれて 固く己を 守りけり のほうが、今の私の状態を良く表しています。 明日は小雪がちらつくとか。 着ぶくれて、さらには熱燗で、固く己を守り、決して敵に向かうような真似はしないようにしましょう。にほんブログ村人文 ブログランキングへ
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初雪

今朝、首都圏では小雪がちらつきました。 初雪です。 おかげでひどく寒い日となりました。 限りなく 降る雪何を もたらすや 西東三鬼の句です。 もちろん、限りなく降るような雪ではなく、ほんのわずかばかりの雪です。 それでも、なんとなく、上の句が頭に浮かびました。 雪は何をもたらすのでしょうね。 私にとってはもっぱら雪見酒ですが、雪は平凡な町を幻想的なものに変貌させる力を持っているようです。 この雪が私の精神に何をもたらすのか、見極めたいものです。 にほんブログ村人文 ブログランキングへ
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東京物語

小津の映画とは関係ありません。 奥田英朗の連作短編集のタイトルです。 1978年4月4日、著者がモデルだと思われる主人公、田村久雄は、18歳でふるさと、名古屋を後にして東京に出てきます。 この日一日を描いた短編から、1989年11月10日、ベルリンの壁崩壊の日、30歳を目前にした一日を切り取って見せた短編まで、主に1980年代の青春物語が、連作短編の形で紡ぎだされていきます。 ユーモア小説というジャンルに入るのでしょうが、失われた時を追慕する郷愁が感じられ、人情小説の趣きを呈しています。 11月10日、男ばかりで集まり、翌日結婚する仲間の前祝いを開いている中、青春が終り、人生が始まる、などと小癪なことをつぶやきつつ、青春の終わりを迎えた男たちがテレビでベルリンの歓喜の様子を見守るラストシーンは極めて暗示的です。 私は1969年生まれ。 1970年代の終りから80年代の終わりにかけて、時代を奮闘する若者の物語に、深い感銘を受けました。東京物語 (集英社文庫)奥田 英朗集英社にほんブログ村 本・書籍 ブログランキングへ
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モナドの領域

今日から年末年始の6連休。 今日はのんびり読書などして過ごしました。 御大、筒井康隆先生の新作「モナドの領域」を読みました。 メタフィクションもしくはパラフィクションの要素を取り込んだ哲学的で難解な小説でした。 GODと呼ばれる神以上の存在を自称する者が登場し、この世界と隣接する他の世界との綻びを論理学的に修繕するさまを、ミステリー仕立てで描いた作品です。 そこそこ読めますが、御大の作品を30年以上にわたって読み続けた私からすると、もはや筆の衰えは隠しようがありません。 痛々しくすら感じます。 引退の潮時ではないでしょうか。モナドの領域筒井 康隆新潮社
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冬至

今日は冬至だそうですね。 一年で最も陽が短い日。 でも明日から少しづつ陽が伸びると思えば、希望が持てます。 柚子湯に入って、かぼちゃを食べる日でもありますが、ただの平日に過ぎない今日、我が家はそんな優雅なことが出来るはずもありません。 ゆげかをる 柚子湯にしづみ 萎びたる 体撫づれば 母のおもほゆ  窪田空穂の歌です。 40代半ばの私の肉体は、萎びたというほどではありませんが、青年のような張りはもちろんありません。 最近よく近所のコナミスポーツクラブでサウナや大きな風呂を楽しみますが、肉体は人それぞれ。 いかにもスポーツクラブらしく、中年から初老の年頃でも引き締まった体の人もいれば、おそらく私と同様にスポーツ施設は利用せず、温浴施設だけを利用しているらしい見事な太鼓腹のおっさんや、高齢ゆえか痩せて萎びてしまったおじいさんもいます。 公衆浴場に行くと、年齢による体の変化を感じさせられます。 子供を公衆浴場に連れていくことも、人は必ず老い、肉体は衰えるのだということを実地に見聞させるのも、教育になるかもしれませんね。 にほんブログ村人気ブログランキングへ
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命売ります

最近ちくま文庫から復刊された三島由紀夫のエンターテイメント、「命売ります」を読みました。命売ります (ちくま文庫)三島 由紀夫筑摩書房 三島由紀夫の作品は、文庫で読めるものはすべて読んでおり、その中には同じくエンターテイメントと言って良い「永すぎた春」や「美徳のよろめき」なども含まれています。永すぎた春 (新潮文庫)三島 由紀夫新潮社美徳のよろめき (新潮文庫)三島 由紀夫新潮社 しかしそれらと今作が決定的に異なっているのは、今作が痛快な冒険小説風な仕上がりになっており、抜群に面白いことでしょう。 新聞の活字がすべてゴキブリに見えたことに絶望して睡眠薬の大量服薬で自殺を試みる青年。 しかしそれは未遂に終わります。 生還した青年は、命は失ったものとして、命売ります、という広告を新聞に掲載します。 ここからじつに怪しげな依頼主が次々に現れ、命がけの仕事を依頼しますが、どういうわけか生き延びて、一財産築いてしまいます。 しかし、彼の存在に危険を感じた秘密結社が彼を殺害しようと試みるに及んで、死への恐怖を喪ったはずの青年に、生きたいという意欲を生ぜしめさせるのです。 それからの彼の生活は、落魄...
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のんびり

今日は休暇を取りました。 本を読んだりして、のんびり過ごしました。 読んだのは、「我が家のヒミツ」。我が家のヒミツ奥田 英朗集英社 なんだか少し筆が衰えたような印象を受けました。 誰でも年を取って、衰えていくんですねぇ。 この世の真実とはいえ、少し、寂しくなりました。
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艶書

メールだのSNSだのといった手段が発達してきましたが、恋の告白をするのに、昔懐かしい恋文という手段は、廃れてしまったのでしょうか? 愛だの恋だのといった艶っぽい話を失って久しい私には、近頃の事情が分かりません。 しかし少なくとも、私が若い時分には、まだ恋文は、重要な告白の手段であったように思います。 古語では、艶書(えんしょ又はえんじょ)とも呼んだ恋文。 ラブレターと言ったほうが通りが良いかもしれませんね。 わが国の浪漫文学の奇才、泉鏡花の掌編に、「艶書」という小説があります。艶書泉 鏡花メーカー情報なし 泉鏡花らしい、流麗な文体と、テンポの良い会話が特徴の、幻想的な作品です。 ある病院に夫の見舞いに行くご婦人。 その美しさに見惚れたお見舞い帰りの男が声をかけます。 病院の近くに狂人がいて、むやみに石を投げる、と警告するのです。 ここから、男女の間に不思議な会話が交わされます。 男がある人妻からの艶書を紛失し、困っていたところ、ご婦人がそれを拾ったというのです。 中身を見たかどうかを気にする男。 女は最初しらばっくれていますが、ほどなくして涼しい顔で「拝見しましたよ」と応えます。 それ...
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白き師走

早いもので師走ももう10日。 今年も残りわずかとなりました。 明日は職場の忘年会。 そんなくだらないことを一つ一つこなしながら、月日は流れていくのですねえ。 風吹て 白き師走の 月夜哉 正岡子規の句です。 師走の慌ただしさとともに、冬の美がうまく詠みこまれていて、私が好む句です。 熱燗が旨い季節でもあります。 今宵、熱燗をちびちびやりながら、白き師走の夜を楽しむといたしましょう。にほんブログ村人気ブログランキングへ
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聖域

昨日は自宅で読書などして静かに過ごしました。 読んだのは、篠田節子の小説、「聖域」です。聖域 (集英社文庫)篠田 節子集英社 これは、小説内小説である「聖域」という作品をめぐる物語です。 文芸雑誌の編集者、実藤は、退職した先輩の机の引き出しから、大部の、しかし未完の原稿を発見します。 それを読んだ実藤は、力強く、幻想的な、平安時代の天台宗の僧侶が東北の邪神に苦しめられながらこれらと対決する物語に深く心奪われます。 実藤は作者である水名川泉と面識のあった先輩編集者や老作家のもとを訪れ、作者の居所を突き止め、小説を完成させようと決意します。 しかし、水名川泉と関わりを持った者は、あるいは悲惨な末路を遂げ、あるいは心に深い闇を抱えており、みな一様に関わり合いになるな、と警告します。 それでも諦めきれない実藤は、物語の後半、ついに東北で巫女となっている作者に巡り合うことができるのです。 巡り合ってからがまた大変です。 この世とあの世の橋渡しをする宿命を持った作者は、続きを書くことを拒否。 それかあらぬか、最近事故死した実藤の恋人をあの世から呼び寄せてしまいます。 それがため、恋人との甘い記憶に...
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我が家の問題

家族の悲喜こもごもを描いた奥田英朗の短編集「我が家の問題」を読み終わりました。我が家の問題 (集英社文庫)奥田 英朗集英社 以前読んだ「家日和」に連なる、おかしくも切ない短編群です。 じつは、その系譜に連なる「我が家のヒミツ」もすでに購入済みです。家日和 (集英社文庫)奥田 英朗集英社 我が家のヒミツ奥田 英朗集英社 突如、UFOと交信できるようになった、と言い張る夫を心配し、奇想天外な方法で夫を救出しようとする妻や、両親が離婚しようとしていると思い込んだ女子高生の葛藤など、様々な切り口で家族の問題を軽快なタッチで描き出して、爽やかな読後感です。 家族を題材にした小説といえば、重松清が有名ですが、それよりだいぶあっさりした感じですかねぇ。 全く嫉妬心を掻きたてられる小説家ですねぇ。
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憂国忌

今日は三島由紀夫の命日、憂国忌です。 森田必勝と市ヶ谷の自衛隊に乗り込み、檄を飛ばした後、自衛官のうち誰一人として呼応することがないことを知って、割腹自殺して果てました。 それから45年。 生きていれば90歳です。 あの事件が、偉大な文学者であった三島由紀夫を、スキャンダルに満ちた国粋主義者に変えてしまいました。 極めてシニカルな小説を書いた彼が、あのような激情に狂ったとしか思えない事件を起こすとは驚きです。 あの事件は、当時の左翼過激派にも衝撃を与え、新左翼から新右翼に転向する者を生み出しました。 憂国忌の語源となった「憂国」は、2.26事件の後、割腹して果てる青年将校と妻の後追い自殺、それにいたる長い情交が描かれ、それは魔的な美しさを誇ってはいても、右翼的でも国粋主義的でも、さらには憂国の情を感じさせるものでもありません。花ざかりの森・憂国―自選短編集 (新潮文庫)三島 由紀夫新潮社 自衛隊に乗り込む直前に書きあげた「天人五衰」にしても、極めて冷静な筆致で、これから腹を切りに行く人が書いたとは思えません。天人五衰―豊饒の海・第四巻 (新潮文庫)三島 由紀夫新潮社 一体作家の精神に何...
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ズル休み

3連休明けのせいでしょうか、朝起きたら猛烈に出勤したくない、という思いが強くなり、ズル休みしてしまいました。 午前中はぼんやり過ごし、午後は読書をしました。 篠田節子の短編集「家鳴り」です。家鳴り (集英社文庫)篠田 節子集英社 ホラー風味の短編集という触れ込みでしたが、どちらかというと人間精神の暗部を端的に切り取った感じでしょうか。 おいしそうに食事をする妻の顔を見るのが唯一の楽しみになった専業主夫の男が、妻にどんどん飯を食わせ、ついには起き上がることも出来なくなった妻が発作を起こして亡くなるのと同時に丹精こめた家が音を建てて崩れていく、一種の心中物の表題作。 中学生の少女に魅入られて破滅していくサラリーマン。 奇妙なようでいて、誰に起こってもおかしくない物語が、静かに、かつ不気味に綴られます。 なんとなく気分が沈むお休みの日には、ぴったりの内容かもしれません。
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