文学

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教団X

昨夜、中村文則のベストセラー長編、「教団X」を読み終わりました。教団X (集英社文庫)中村 文則集英社 自分の元から突如失踪した彼女を追って、カルト教団と思われる団体にたどり着いた男。 しかしそこはカルト教団と言えるような者ではなく、宗教や量子力学を学ぶゆるやかな団体。 その団体にかつていた男が、名前の無い、性の解放を謳うセックス教団を組織しています。 公安は彼等に目を付け、Xと呼んでいます。 仏教、量子力学、キリスト教、アフリカの土俗宗教などについての考察が延々と語られ、中だるみします。 そして、性、貧困、全体主義、平和への理想、テロなどが、これでもかと詰め込まれ、小説として破綻しているように感じました。 魅力的な題材を扱っているのに、もったいないと思います。 もう少しテーマを絞り込むべきでした。 お勧めできない一冊です。にほんブログ村本・書籍ランキング
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土の中の子供

昨夜は中村文則の「土の中の子供」という小説を読みました。土の中の子供 (新潮文庫)中村 文則新潮社 芥川賞受賞作で、その後は大活躍している作家ですが、読むのは初めてです。 主人公である「私」と暴力をめぐる物語ですが、近代以降の、わが国の、いわゆる「純文学」の悪い伝統を引きずっているように感じました。 「私」が、延々と暗くて絶望的な物語を語る、と言う。 「私」は子供の頃親に捨てられ、遠戚の夫婦に引き取られますが、激しい虐待にあい、そのことが「私」の精神をゆがませています。 山中に埋められる、という生きるか死ぬかの経験まで積んでいます。 その後施設に引き取られ、遠戚の夫婦は逮捕されてしまいます。 陰鬱で悲惨な一人語りが続きます。 正直、共感できません。 しかし、読み進むうち、これは再生と希望を描こうとしているのではないか、と気づかされます。 20代の「私」はタクシードライバーとして生計を立てていますが、暴走族を挑発してボコボコにされるなど、やたらと恐怖体験を求めます。 不思議なことに、そこに、一種の希望が見えてきます。 私が望んでいたのは、克服だったのではないだろうか。自分に根付いていた恐...
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飛ぶ夢を見たくて

師走を迎えたせいか、このところ忙しい日々が続いています。 仕事中も、なんだかイライラしています。 そのせいか、仕事をほっぽりだして、どこかへ消えたいなどと、実現不可能な夢を見ます。 折りも折り、先般45歳以上の職員全員に早期退職を促すメールが人事担当部署から届きました。 人件費の高い中高年の職員には早く辞めてほしいようです。 しかし、少々退職金が上乗せされたところで、それだけで一生食っていけるわけもありません。 手を挙げたいと思いながら、ぐっと堪えています。 私は、どこかへ飛んで行きたいのでしょうか。 飛ぶ夢を 見たくて 夜の金魚たち という俳句がありましたっけ。 黛まどかの句で、「聖夜の朝」という句集に載っていたように覚えています。聖夜の朝 (講談社文庫)黛 まどか講談社 一生を狭い水槽で過ごす金魚たち。 その金魚たちですら、いやだからこそ、飛ぶ夢でも見て慰めを得たいのでしょうか。 私は悲しいかな飛ぶ夢をみたことがありません。 せめて夢の中ででも、浮世のよしなし事を忘れて、自由に羽ばたいてみたいものです。にほんブログ村 人気ブログランキング
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追われる

師走も4日目を迎えました。 今のところ寒さはそれほどでもありませんが、なぜか気が急く月ですね。 うしろから 追はるゝやうな 師走哉 正岡子規の句です。 師走の慌ただしい感じがストレートに表現されています。子規句集 (岩波文庫)高浜 虚子岩波書店 今上陛下のご退位が再来年の4月末と決定し、平成の御世も残りわずかとなりました。 そのことも、なんとなく気持ちが焦る要因になっているのかもしれませんね。 私は昭和44年の生まれ。 平成の御世が始まった時、大学生でした。 世はバブルのまっただ中。 私はバブルに浮かれる人々を、冷ややかに見ていました。 その後バブルの反動か、20年以上に及ぶ冬の時代が続いています。 最近は景気が良いと聞きますが、給料が上がらないのでそんな実感はありません。 次の元号がどんなものになるのかはまだ分かりませんが、3つの時代を生きることになるのは間違いなさそうです。 もしかしたら、4つの時代になるかもしれませんね。 皇太子殿下は私より年上ですし。 なんだか無駄に歳月を過ごしてきたような気がします。 目の前の為すべきことを、ただ機械的に為してきただけのような。 多分これからも...
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Nのために

今日は静かに読書をして過ごしました。  湊なかえの「Nのために」を読みました。 知りませんでしたが、ドラマ化もされているんですね。Nのために (双葉文庫)湊 かなえ双葉社【Amazon.co.jp限定】Nのために DVD-BOX(コースターセット付)榮倉奈々,山本剛義,阿南昭宏TCエンタテインメント 高級高層マンションで、夫婦が殺されます。 その現場に居合わせた人たちが、それぞれ一人称で事件について語る、という構成になっています。 第一章では、警察の質問に答える形で、それぞれの証言の食い違いはありません。 しかし第二章以降、現場に居合わせた者たちが、真相を語りだしたとき、警察に話した内容とは全く異なる事件の全容が明らかになります。 一人称ですから、当然、主観で語られます。 そうなると、同じ事件が異なった様相を呈します。 ちょうど、芥川龍之介の「藪の中」のように。藪の中 (講談社文庫)芥川 龍之介講談社 それぞれの生い立ちなども判明し、読後感の悪い作品になっています。 Nとは、登場人物6人全員を指しています。 6人ともが、苗字か名前のイニシャルがNなのです。 それぞれが、自分とは違うNの...
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