文学

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ナオミとカナコ

昨夜、奥田英朗の長編「ナオミとカナコ」を読了しました。 知りませんでしたが、ドラマ化もされているようです。 この作者の作品はかなり読んでいます。 大きく分けて、ユーモア小説と、犯罪に材をとったものに分けられるかと思います。 しかし犯罪の小説もいわゆる謎解きを主眼とする推理小説ではなく、一種の心理劇の様相を呈し、そこはユーモア小説と一脈通じるところです。 で、「ナオミとカナコ」は犯罪を題材にしたもの。 大手百貨店に勤めるナオミは東京で独り暮らし。 学芸員になりたかったナオミは、百貨店が運営する美術館での勤務を望みますが、29歳になる今もかなえられません。 ナオミの学生時代からの親友、カナコは大手都市銀行勤務のエリートサラリーマンと結婚し、専業主婦におさまりますが、夫はDV野郎で、カナコはいつもどこかに傷や痣を負っています。 久しぶりに会ったナオミとカナコ。 ナオミがカナコの顔の痣に気づき、問い詰めると、カナコは夫の暴力癖を告白します。 それに衝撃を受け、憤慨するナオミ。 離婚を勧めますが、カナコはそんなことを言い出したら暴力どころか殺されてしまう、とおびえるばかり。 百貨店の大得意で認知...
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わたしを離さないで

昨日は一日かけて、日本生まれの英国人作家、カズオ・イシグロの長編「わたしを離さないで」を一気に読了しました。 読み始めたら、I can’t stop という感じで、引き込まれました。 ヘールシャムという特別な施設で育った女性、キャシーの独白という形式で、物語は進んでいきます。 ヘールシャムというのはいかなる施設なのか、最初は分かりません。 そこで保護官と呼ばれるどこかぎこちない態度の教師たちに、もっぱら絵画や詩の製作を教わる生徒たち。 彼らの将来は、すでに決まっています。 それは介護人と呼ばれる仕事に就き、その後は提供者と呼ばれる存在になること。 ネタバレになってしまいますが、ミステリーではないので良いでしょう。 ヘールシャムとは、臓器提供のために生み出されたクローン人間の教育施設なのです。 クローン人間とはいえ、そこは人間。 嫉妬や妬み、恋愛、人間関係の悩みなど、当たり前の人間の感情が、精緻に、しかも抑えた筆致で淡々とつづられます。 提供者などになりたくない、普通に働きたい、という切実な悩みが描かれたり、真に愛しあっているカップルは、それが真の愛だと証明されれば、提供を猶予される、な...
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いやぁな感じ

今日もすばらしい陽気でしたね。 今朝は7時に起きてシャワーを浴び、ハムエッグとお新香で朝飯を食いました。 少し食休みをして、洗濯をし、掃除機をかけ、さらに便所掃除もして、布団を干しました。 なんとなく仕事ちっくですが、9時半には一とおり済ませました。 同居人は朝が苦手なので、日曜日の家事は大方私がやることになります。 その後、読書を楽しみました。  なんとなく嫌な感じのする男を主人公にした中篇3編を収めた吉田修一の「熱帯魚」です。 子連れの美女と、子供の頃親が再婚し、連れ子どおしだったために義理の弟となった青年と、奇妙な同棲生活を送る大工の青年。 ゲイの大学教授と仲良しで、それがスパイスになっています。 義理の弟は引きこもりがちで、熱帯魚を飽きずに眺めています。 で、この大工、なんというか心が狭いというか、自分ひとりの鬱屈にとらわれて、乱暴を働いたりします。 これが「熱帯魚」。 彼女にDVを働き、怒った彼女が主人公の親友と浮気してしまいながら、許さない、ということの意味がどうしても分からないひねくれ者を描いた「グリーン・ピース」。 会社の休暇を利用して房総の民宿でバイトし、その間に民宿...
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痛み

憂鬱ななか、一週間きちんと出勤できました。 まずは目出度い。 一週間ほど前に寝違え、首から肩にかけてひどく痛むのも憂鬱に拍車をかけているようです。 なんといっても痛いのはしんどいものです。 階段を下りるだけで、その衝撃で肩から背中にかけてひどい痛みが走ります。 ちょっと痛むだけでしんどいのですから、大けがや大病はさぞかししんどいでしょうね。 雪ぞ降る われのいのちの 瞑ぢし眼の かすかにひらき、痛み、雪降る 若山牧水の和歌です。 この歌人には珍しく、読点を打っているのが、痛みの激しさを物語っているかのようです。 それはもちろん、肉体の痛みとは限りません。 むしろ、精神的な痛みであったと解するほうが納得がいくでしょう。 しかし肉体の痛みが精神に惹起せしめるものは、苦しみであるに違いなく、私は痛みがもたらす苦しみと、痛みゆえに思わざるを得ない命の儚さとを感じ、しばし、瞑目せざるを得ません。 この歌は歌人が青年時代に出版した「死か芸術か」という大上段に振りかぶったタイトルの歌集に収められています。 若さゆえの気負いを感じさせます。 今は初夏。 雪に痛みを仮託することはできません。 そこで夏の...
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田舎町の人情喜劇

奥田英朗の連作短編集「向田理髪店」を読み終わりました。 かつては炭鉱で栄えながら、今はすっかり寂れてしまった北海道の田舎町が舞台です。 当然、夕張市がモデルと思われます。 理髪店の主人を主人公に、いずれも幼馴染のガソリンスタンド経営者や役場の課長などが登場し、コミカルに様々な騒動が繰り広げられます。 札幌でサラリーマンをやっている息子が家業を継ぐといって帰ってきたり、40男が中国の田舎から嫁をもらいながらお披露目をするのを頑なに拒んだり、、赤坂でホステスをやっていた女が帰省して新しくスナックを開き、町中の中年男が色めきたったり、映画のロケ地になったり、町出身の青年が東京で詐欺事件を起こして逃げてきたり。 寂れた田舎町とは言ってもそこは人が住む町。 必ず何事かが起こります。 寂れた元炭鉱町が舞台とはいえ、どこか明るく、楽しげです。  私は東京と千葉にしか住んだことがありません。 旅行で田舎に行くことはあっても住んだことが無いので、実状はよくわかりませんが、その私ですら、いかにも存在しそうな感じがします。 そこが作者の腕なのでしょうね。 寅さんの田舎版と言ったところでしょうか。 楽しい人情...
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