文学

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むなしき空に

ようやっと、4月中旬らしい、暖かい日差しが感じられる僥倖に恵まれました。 このところすっきりしない天気が続いたため、ありがたく感じられます。 しかし、桜が散った後の春雨に抒情を感じさせる和歌もあります。 花は散り その色となく ながむれば むなしき空に 春雨ぞ降る 新古今和歌集にみられる式子内親王の和歌です。新古今和歌集〈上〉 (角川ソフィア文庫)久保田 淳角川学芸出版新古今和歌集〈下〉 (角川ソフィア文庫)久保田 淳角川学芸出版 桜が散ってしまった風景を眺めると、桜を求めるというわけではないけれど、春雨が降って、なんとなくむなしく感じられる、といったほどの意かと思われます。 なるほど、桜の狂的な咲き乱れぶり、散り乱れぶりを思えば、その狂気が終わってしまったのですから、後に訪れた静かな、暖かい雨には、何か気が抜けたような、一種のむなしさを感じるのも、むべなるかな、と思います。 一昨日までの雨続きは、そんな春の憂愁を感じさせつつも、初夏への期待を感じさせるものでしたね。 それを過ぎなければ、爽やかな初夏は訪れないのですから。 しかし、爽やかな初夏の後には、過酷な猛暑が待っています。 地域...
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ノーベル賞作家の死

ドイツのノーベル賞作家、ギュンター・グラス氏が亡くなった、との報に接しました。 享年87歳。 大往生と言っても良い年ですが、そういう感慨はわきません。  私にとっては、「ブリキの太鼓」の印象が鮮烈です。 自らの意志により、3歳で成長を止めた子供を主人公にした、奇怪かつ緻密な作品です。 かなりグロテスクな描写もあり、まさしく大人のための残極物語といったところでしょうか。ブリキの太鼓 1 (集英社文庫 ク 2-2)高本 研一集英社ブリキの太鼓 2 (集英社文庫 ク 2-3)高本 研一集英社ブリキの太鼓 3 (集英社文庫 ク 2-4)高本 研一集英社 たしか私が小学生の頃映画化され、カンヌでパルムドールを受賞したように記憶しています。ブリキの太鼓 HDニューマスター版 ダービッド・ベネント,シャルル・アズナヴール,アンゲラ・ヴィンクラー,ダーヴィッド・ベネント,ダニエル・オルブリフスキギャガ・コミュニケーションズ その年は「エレファント・マン」が話題で、小学生だった私には「ブリキの太鼓」は難解に過ぎ、「エレファント・マン」のほうが面白いのに、と思ったものです。エレファント・マン ジョン・ハー...
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桜吹雪に牡丹雪

珍しく、桜も葉桜になろうという4月の今日、雪が降りました。 こんなこともあるのですねぇ。 雪中梅図というのは聞いたことがありますが、雪中桜図というのは聞いたことがありません。 まるで起きてはならない現象が起きたようで、職場の窓から眺める外の風景は、美しくも禍々しくも感じられる、幻想的なものです。 雪と見て かげに桜の 乱るれば 花の笠着る 春の夜の月 「山家集」にみられる西行法師の和歌です。  雪かと思ったら散る桜であった、その向こうに月が見える、というほどの意かと思います。山家集 (岩波文庫 黄 23-1)佐佐木 信綱岩波書店  誠に美しく幻想的な和歌ですが、雪かと思うほど寒いにせよ、実際に降ってはいないわけです。 ところが今日は散る桜と本物の雪が一緒に見られるという珍しい事態が起きており、これは目に焼き付けなければなりませんね。 そのせいか今日はなんとなく気分が浮かれています。 午前中、そわそわして窓の外ばかり見ていました。 積もるほど降ることはないでしょうから、帰りの足を心配することもありません。 むしろ少しでも長く、この牡丹雪と桜吹雪の共演を眺めていたいと思わずにはいられません...
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邪悪

魑魅魍魎の跋扈せし現世に生を受け四十有余年、我もまた同類なりと自覚す。 我が隠したる悪、魑魅魍魎に倍すればなり。 魑魅魍魎の類、ただおのが欲を満たさむと策をめぐらすのみにて、そは真の悪に非ず。 我、堕天使ルシファーをも戦慄せしむべき邪悪を隠しいたり。 ルシファー、ただ神との戦に敗れしのみにて、神敗れたれば、堕天使正義たるべし。 而して我、天使、堕天使もろともに滅ぼし、現世の在り様を暗転せしめむと欲す。 暗転したる後、起こるべき事態知るべからず。 ヒトラー、ナポレオン、ポル・ポト、稀代の悪人なりと雖も、我が邪悪に勝らむや。 我が邪悪の元は我が誕生したるを所以とす。 今に至るも生を全うし得るは、悪の悪、闇の闇が我を守護せしめたればなり。 知らず、悪の何たるか。 ただ、人、我を邪悪と呼ぶこと多ければ、我、邪悪の存在なりと自覚したり。 しかれども我、この世の法を破りたることなし。 日々職務に精励せり。 なにゆえ我、邪悪なりしか。 そは、我が魂の運動、邪悪を志向したればなり。 そも、邪悪とは何ぞ。 魂、この世の暗転を望むの強きをもって、邪悪と呼ぶべきか。 あるいは社会を呪詛したるをもって邪悪と呼...
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少年の暴行死

13歳の少年が河原で殺害されていた事件の容疑者とおぼしき17~18歳の少年3名が捕まったそうですね。 漏れ伝え聞くところでは、被害者の少年は不良グループのパシリのような役割だったところ、ささいな理由で暴行を受けるようになり、グループから抜けたがってさらなる暴行を受け、故意か否かはともかく、殺害に至ったようです。 故意か過失か未必の故意か、そこら辺は裁判で重要な要素になるのでしょうが、素人目から見ると、そもそも遺体が全裸だったという時点で、はなから殺す気だったとしか思えません。 実話をもとに残忍な殺人犯を描いた「凶悪」では、いともたやすく人を殺す、「先生」と呼ばれる人物が登場します。凶悪 山田孝之,ピエール瀧,リリー・フランキー,池脇千鶴,白川和子Happinet(SB)(D)凶悪 山田孝之,ピエール瀧,リリー・フランキー,池脇千鶴,白川和子Happinet(SB)(D)凶悪―ある死刑囚の告発 (新潮文庫)「新潮45」編集部新潮社 何が「先生」だ、という怒りが湧いてくるような映画でしたが、それも実話だと思えばこそ。 虚構だと分っていれば物語として楽しめるでしょう。 日頃残酷な物語を楽しむ...
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