文学

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追悼 大西巨人先生

恥ずかしながらつい先日まで知らなかったのですが、戦後文壇の巨人、大西巨人先生が今年の3月に亡くなられていたそうです。 日頃このブログに親しんでおられる方々は、私の耽美主義的かつ浪漫主義的傾向から、先生のような理に勝った小説家を好まないのではないかと推測されるのではないかと邪推します。 さにあらず。 私はノーベル文学賞を受賞した大江健三郎は大嫌いですが、大西先生は深く尊敬しています。 なぜか? 大西先生は嘘八百でしかない小説に生命を吹き込み、一方大江健三郎はそこに愚かな思想信条を託したからだと言う他ありません。 小説は読んで字の如く、小さな説です。 天下国家を論じるものではなく、色恋だとか、諍いだとか、友愛だとか、そんなくだらないようでいて、人間の本質を描く、人の性をわざわざ嘘をついてまであぶりだす、因果なものです。 大西先生の作品と言えば、何をおいても「神聖喜劇」は外せません。 神聖喜劇〈第1巻〉 (光文社文庫)大西 巨人光文社神聖喜劇〈第2巻〉 (光文社文庫)大西 巨人光文社神聖喜劇 (第3巻) (光文社文庫)大西 巨人光文社神聖喜劇〈第4巻〉 (光文社文庫)大西 巨人光文社神聖喜劇...
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八十八夜

今日は八十八夜。 立春から87日目。 日本独自の雑節と言われていますね。 一説には、季節外れの遅い霜が降りたりする時季とかで、農民に注意喚起するために設定されたとやら。 また、この日摘んだお茶を飲むと長生きできるとも言われ、夏も近づく八十八夜、という唱歌がありましたね。 霜なくて 曇る 八十八夜かな 出流れの 番茶も 八十八夜かな いずれも正岡子規の句です。 やっぱり霜やお茶を詠んでいますね。 日本人にとっての八十八夜の代表的なイメージだったのでしょう。子規句集 (岩波文庫)高浜 虚子岩波書店 幸い、今朝、霜など降りず、暖かな日を迎えています。 普段珈琲ばかり飲んでお茶を飲まない私ですが、今日ばかりはお昼の供は暑いお茶です。 せっかく季節感を大切にする国に生まれたのですから、その時々の季節を楽しみたいものです。にほんブログ村 人文 ブログランキングへ
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御大のライトノベル

午後は御大、筒井康隆翁が執筆した初めてのライトノベル、「ビアンカ・オーバースタディ」を楽しみました。 もっとも、翁はライトノベルという概念が生まれるはるか以前から、「時をかける少女」などの名作を物しています。時をかける少女 〈新装版〉 (角川文庫)貞本 義行角川書店アニメ版 時をかける少女筒井 康隆,「時をかける少女」製作委員会金の星社 かつてはジュヴナイルなんて言われていた、中高生をターゲットにしたジャンルの小説ですね。 もっとも近頃では、ライトノベルの読者層は中年男女にまで広がっているとか。 ゲームやアニメのファンが50過ぎの方にまで伸びていることを思えば当然かもしれません。ライトノベル完全読本 (日経BPムック)日経キャラクターズ日経BP社 さらに遡れば、戦前には少年小説とか少女小説とか呼ばれるジャンルがありましたし、もっと昔はお伽話なんて言いました。 いつの時代もそういうジャンルがあるものです。 ライトノベルという言葉は20年ほど前に生まれたもので、今でも明確な定義はなく、中高生向けの新書や文庫本で、読みやすく、オタクっぽい挿絵が入っていて、恋愛物、SF、ホラー、推理物など、多...
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川端康成先生、安らかに

1972年の今日、ノーベル文学賞作家の川端康成先生が逝去されました。 ガス自殺と伝えられます。 戦後、「私はもう日本の美しか詠わない」と宣言され、官能的な作品や美的な作品を生み出し、それが評価されてのノーベル文学賞受賞だったと思われます。 授賞式には燕尾服ではなく、紋付き袴姿で臨み、あくまで日本の美を追求する姿勢を鮮明にされましたね。 その姿、1968年、政治の季節の真っ最中だった日本の人々に強い印象を残したであろうことは、想像に難くありません。 遺書はなく、老醜をさらしたくなかったのでは、と憶測を呼びました。 「美しい日本の私」と題した受賞記念講演では、道元禅師の、春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて すずしかりけり という和歌を朗吟し、ためにこの歌が人口に膾炙するようになったと言っても過言ではありません。道元の和歌 - 春は花 夏ほととぎす (中公新書 (1807))松本 章男中央公論新社 三島由紀夫を見出したことでも知られ、彼は川端先生を師と慕いました。 三島由紀夫が男色家であったことは公然の秘密ですが、川端先生はたいそうな女好きで知られていました。 純文学だけではなく、中原...
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聖痕

久しぶりに御大、筒井康隆の新作を鑑賞しました。 おそらくは3.11にインスパイアされて描かれた滅びの予感を実験的に描いたと思われる、「聖痕」です。 1973年、この世のものとは思われぬ美貌をもって生まれた5歳の童子、葉月貴夫は、その美貌に取りつかれた醜い男に襲われ、睾丸ごと生殖器を切り取られてしまいます。 真にショッキングな出だしです。 ここから、葉月一家は貴夫の身に起きたことをひた隠しにすることに精根を込めます。 貴夫はますます美しく成長し、それは神々しいほどです。 ために言い寄ってくる女や男は引きも切らず、しかし性欲の源を失った貴夫は性欲というものが理解できないまま、唯一の快楽、美食に走り、食品会社での開発を担当したのち、自分のレストランを持ちます。 そこには美食を求める紳士淑女が出入りする、秘密の隠れ家の様相を呈し、しかも会員制の特別室では、男女の紹介などが行われ、それは性欲を持たない貴夫なればできたことかと思われます。 じつに多くの癖のある男女が登場し、わきを固めます。 そして、3.11の悲劇。 さらに、思いがけない、長い年月を経て偶然出会った犯人との対峙。 題材は面白いと思う...
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