文学

スポンサーリンク
文学

暗い日曜日

北原白秋は短い間でしたが、私のふるさと、江戸川区に住んでいたことがあります。 23区とはいえ東のはずれで、当時はずいぶん鄙びた感じだったようです。 夏浅み 朝草刈りの童らが 素足にからむ 犬胡麻の花 北原白秋が江戸川区在住の頃詠んだと伝えられる和歌です。 歌の内容からも、当時の江戸川区が牧歌的な雰囲気を持った田舎であったことが知れます。 西欧の文学にかぶれていたこともある北原白秋ですが、こんな牧歌的な、ノスタルジックな和歌を詠んでいたのですねぇ。 ちょっとびっくり。 江戸川区では、都内で唯一の手作りの風鈴を作っていたり、金魚が盛んだったり、奇妙なものが有名ですね。 しかし私は江戸川区に住んで都心の学校に通っている頃、江戸川区はとてつもなく都心から遠いド田舎で、なんでこんなところに住まなければいけないのだと嘆いていました。 で、周辺区から都心に通うしんどさに嫌気がさして、千葉に就職して東京から遁走しいたというわけです。 千葉市中心部から電車で二駅目に住んでいるせいか、住まい周辺は今の所のほうが都会的で利便性も高く、しかも人は少ないという、私にとって理想的な環境です。 しかし私にとって最も...
文学

そのこと

昨夜、ウィスキーのロックをちびちびやりながら、かつて傾倒した三島由紀夫の「鏡子の家」をぱらぱらと眺めました。 昭和30年代の東京を舞台にした青春群像劇で、夫と別居して信濃町で娘と暮らす鏡子の家に入り浸る4人の若者の成功と挫折を描いた作品です。 すでに「金閣寺」などで名声をおさめていた三島由紀夫が、いわゆるメリー・ゴーラウンド方式と言われる、複数の主人公が互いにあまり関わることなく物語が進んでいくという手法を採った意欲作ですが、当時の文芸評論家からは酷評されたようです。 読み手が三島由紀夫に追いついていなかったものと思われます。 メリー・ゴーラウンド方式と呼ばれる手法は映画でも使われ、名作「愛と哀しみのボレロ」などが製作され、私はこの手法の物語をわりと好んでいます。 野心あふれる若いサラリーマン、プロを夢見るアマチュアボクサー、売れない画家、売れない俳優の4人の青年が同格の主人公であり、戦後の高度成長を冷ややかに見ながら4人の希望あふれる若者に自宅をサロンとして提供する鏡子が狂言回しのような役割を担っています。 彼らはそれぞれに成功し、鏡子の家から離れていき、結局挫折するのです。 最後に...
文学

色彩

ようやっと、昼間は初夏を感じさせる陽気になりました。 季節の移ろいが今年はゆっくりに感じられましたが、それでも着実に季節は変わっていきます。 私は与謝野晶子の歌はあまりに情が強(こわ)すぎて好みませんが、初夏の訪れを祝って色彩感覚豊かな彼女の和歌を思い起こしました。 ああ皐月 仏蘭西の野は 火の色す 君もコクリコ われもコクリコ 明治末期、子供を日本に置き去りにして与謝野鉄幹を追って与謝野晶子はパリに渡ります。 コクリコとはひなげしの花。 コクリコの鮮やかな赤が、初夏の激しさと晶子の恋情の激しさを物語ります。 おのれとパートナーを真っ赤なコクリコに例えるあたり、怖ろしいですねぇ。 そんな女が追ってきたら、私であれば裸足で逃げ出すところです。 子をすてて 君にきたりし その日より 物狂ほしく なりにけるかな 物狂ほしくでもならなければ、そんな所業には及べますまい。 赤のイメージが強い与謝野晶子ですが、爽やかな青を歌っていて、意外です。         雲ぞ青き 來し夏姫が 朝の髪 うつくしいかな 水に流るる こちらの青は鮮烈というより清冽です。  同じ歌人のなかにも、様々な要素があって、...
文学

色恋

毎朝毎夕、片道30分の通勤の車で、聞くともなく地元FM局のラジオを聞いています。 いつも思うことですが、流行歌というのはどうしてこうも色恋沙汰を歌った破廉恥な歌ばかりなんでしょうねぇ。 でもまぁ、ことは流行歌に限ったことではなく、文学作品でもそうなんですけどね。 ある小説嫌いの男が、小説を嫌う理由として、小説には2種類しか無いからだと言っていたのが印象的です。 ある時男と女が出会い、恋におち、めでたく結婚しました、という話と、ある時男と女が出会い、恋に落ち、別れました、の2種類だそうです。  ずいぶん乱暴な分け方ですが、一面の真実は突いているような気がします。 しかし今は推理小説やらホラー小説やらSF小説やらコメディやら、様々なジャンルがあって、ことはそれほど簡単ではありません。 それにしても、色恋を描くのが文学作品の重要な役割であることは確かなようです。 何事もそうですが、人には得意不得意があります。 色恋にしてもそうです。 やすやすと惚れた異性とくっつくことができ、しかも別れるや途切れなく次の恋人ができる強者もいれば、生涯色恋とは縁なく過ごす人もいます。 勉強やスポーツと比べ、これ...
文学

ウェルテル効果

ゲーテの名作「若きウェルテルの悩み」が発表されるや、ウェルテルの真似をして多くの青少年が自殺したことから、著名人の自殺を模倣して後追い自殺をする者が急増することを、ウェルテル効果と呼ぶようになりました。 2年前の今日、貧乏アイドルを売りにしていた上原美優が首つり自殺を遂げました。 享年24歳。 若すぎる死としか言いようがありません。 この日から一週間、20代・30代の若者の首つり自殺が急増したことから、ウェルテル効果と見られています。 ウェルテル効果の特徴は、単に後追い自殺するにとどまらず、その自殺の方法まで模倣することにあるようです。 古くは人生を不可解として華厳の滝から投身自殺をした一高生の藤村操。 彼は明治36年に自殺しましたが、この後40人もの若者が華厳の滝から身投げして亡くなっています。 事態を重く見た警察が華厳の滝周辺をパトロールし、自殺志願の青年を150人ちかくも保護。 彼らが全員死んでいたら、じつに190人もの若い命が無駄になっていたことになります。 また、1986年には人気絶頂のアイドル、岡田有希子が18歳で四谷のサンミュージック社屋から飛び落り自殺。 多くのファンが...
スポンサーリンク