美術

スポンサーリンク
美術

金子国義の魔道

私は高校生の頃、サド侯爵の狂気じみたアンチ・キリストの文学作品に熱狂しました。 それはことごとく後にサド裁判で有罪となる渋澤龍彦訳のもので、金子国義の挿絵が挿入されていました。 当然のように、私は金子国義の絵画作品にも熱狂することになります。 「かもめ」です。 妖しいエロティシズムが感じられます。 「悪徳の栄え」です。 アンチ・キリストの象徴でしょうか。 「火の番をする女」です。 嫌になってきましたか?「股のぞき」です。最後に最も有名な、「アリスの画廊」です。 サド侯爵の文学同様、濃い感じの作品群で、それは幻想的ともユーモラスとも感じられます。  私はこの魔道へ足を踏み外しそうになりましたが、大学入学後、嫌と言うほど古文漢文を勉強させられ、魔道に落ちることはありませんでした。  しかし今でも時折、魔道への誘惑に囚われることがあります。 そんな時は逆に、思いっきり魔道へ導く書物や絵画に触れることにしています。 そうすると、くどい料理はすぐ飽きるのと同様、飽きてくるのです。 そういえば渋澤龍彦は稲垣足穂をわが魔道の先達とよんでいましたっけ。 稲垣足穂は「少年愛の美学」で日本文学大賞をとり、...
美術

鎌倉銀閣

もう五年以上前になりますでしょうか。 私の友人の女性が、現代美術家と結婚して、個展をやるので見に来てほしい、との招待を受けました。 渡辺五大という作家で、元は東京藝術大学の先生だったらしいのですが、作品制作の時間が欲しいと、大学を退職して作品制作に打ち込んでいるストイックな人らしい、と聞きました。 彼女は貧乏でもいいから夢を追う人と一緒になりたい、と日頃から言っていましたので、ぴったりの相手と結婚したのですね。 恋多き女性というか、失恋話にずいぶんつきあいました。 で、鎌倉でやっているという個展に出向きました。 タイトルはずばり、鎌倉銀閣。 要するに荒れたお堂に銀紙を貼り付けただけのものです。 しかしなぜか、それが山中の隠れ家のような立地と相まって、幻想美を醸し出しているのです。 鎌倉銀閣です。 そこで、作家本人と会い、言葉を交わしました。 もっと狂気じみた芸術家を想像していたのですが、いたって常識的な、一見するとサラリーマンのような人でした。 残念ながら奥様と再会、というわけにはいきませんでしたが、二人の子供に恵まれ、元気に過ごしているとのことで、安心しました。 友人の旦那さんという...
美術

幽体の知覚

今日は六本木ヒルズの森美術館に出かけました。 展覧会は、小谷元彦展 幽体の知覚です。 現在活躍中の30代の芸術家による作品群は、美と醜の垣根を軽々と乗り越え、物思わしげな雰囲気で、私に迫ってきました。 床と天井に鏡を張り、四方を滝の映像を流します。 すると、上を向けば滝に上っていくように見え、下を向くと奈落に落ちていくように見えます。 私は上を向いたり下を向いたりして、自然の造形を自在に操る技に酔ったのです。 また、痩せた馬に乗った骸骨のように痩せた男が刀を振り上げている等身大の彫刻は、ぞっとするほどの迫力がありました。 この作家は、造形の根源を覗きたいという深い欲望を抱えているかのごとく、骸骨だったり、鍾乳洞だったり、少女だったりを、哲学的とも言える問いかけをもって投げかけてくるのです。 そのため、見終わったあと、非常な疲労を感じました。 帰りは六本木ヒルズから麻布に向かい、麻布十番商店街を冷やかし、疲労を癒すため珈琲をいただき、大江戸線の麻布十番駅から帰りました。 疲れましたが、むしろ心地よい疲れで、充実した美術鑑賞だったように思います。小谷元彦 幽体の知覚 Odani Motoh...
美術

ホキ美術館

小春日和に恵まれ、芸術に接したくなった私は、昨年11月に開館したばかりのホキ美術館に出かけました。 場所は千葉市緑区あすみが丘です。 ここは写実絵画の専門美術館ということで、写真と見まがうばかりの見事な写実絵画がこれでもか、と並んでいました。 裸婦であったり、滝であったり、静物であったり。 写実絵画に見慣れていない私には、新鮮な驚きでした。 しかし、あまりに写実に忠実であるためか、そこから画家の意図なり思いなりを汲み取ることができませんでした。 勉強不足を痛感したしだいです。 ⇒ ホキ美術館のHPです。 すぐ隣が昭和の森という広大な自然公園になっており、絵画に集中して疲れた神経を休めるため、しばし散策しました。 アップダウンが多く、木々も豊富で、ここは千葉市内か、と疑うほど、自然豊かな公園です。 早いもので、梅が咲き始めていました。 長い一週間を終えて好天に恵まれ、ふらふらと出かけるのはこの上ない喜びです。 これからもう一つの喜び、焼酎をいただきましょう。↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
美術

九相詩絵巻

九相詩絵巻という絵をご存知でしょうか。 絶世の美女の生前の絵から、死んだ直後の絵、それからだんだんと腐敗してついには土に還るまでを描いた九枚の絵です。 もともと仏教の修行僧が、女色は空しく、また肉体ははかないことを実感し、煩悩を捨てて修行に励むために描かれた絵巻だと言われています。 下に九枚の絵を示します。 これを見れば、どんな美女でも結局は朽ち果て、土に還って行くことを思い知らされ、肉体にとらわれることは空しいと知るでしょう。                         1.生前相 2、新死相                             3、肪脹相                               4、血塗相               5、肪乱相              6、青瘀相                7、噉食相                 8、骨連相                 9、古墳相                    まことにグロテスクな絵で、正視に堪えないものではあります。 現代の日本では亡くなるときれいな体のまま焼いてし...
美術

村上隆

ニューヨークの感謝祭のパレードに、村上隆作の巨大風船が華を添えた、というニュースに触れました。 少し前、ベルサイユ宮殿で個展を開き、フランスで大ブーイングが起きましたが、客の入りは上々だったようです。  インパクトがありますからねぇ。  等身大の巨乳美少女フィギアだったり、浮世絵をモチーフにした絵画だったり。 今日本でもっとも注目されている美術家でしょうね。 なんでも東京藝術大学日本画科出身者では初めて博士号をとった理論家でもあるようです。 ご本人はマティスのような天才にはなれないけど、ウォーホールやピカソくらいにはなってる、というような強気の発言をしています。  その自信家ぶりがまた素敵です。  謙虚な芸術家なんて、黒い白馬みたいな言語矛盾にさえ感じます。  いわゆるヲタクの人たちからはかなり嫌われているらしいですねぇ。  まず、ヲタクの物だった美少女フィギアをパクって、しかもそれが高値で売買されている上に、現代美術家のほうがヲタクより偉そうだから、とあるサイトで解説されていました。 大体新しいことを始める人はどんな世界でも非難されるものですから、関心をもってもらえればそれだけであり...
美術

銀閣

昨夜NHKで銀閣(慈照寺)の特集番組を放送していました。 最新の調査で、銀閣の二層は銀色に近い白い成分が貼られていたらしいことが判明したそうです。 子どもの頃、金閣の向こうを張って、銀箔を塗る予定だったが、予算不足で塗れなかった、と習いましたが、それは誤りであったようです。 修学旅行で銀閣を訪れた時は、がっかりしましたね。 きらびやかな金閣に比べて、まるで山中の小さなみすぼらしいお堂のようでした。なんで国宝なんだろうと、疑問に思ったことを思い出します。 番組では、月が現れてから天空高くのぼり、沈むまでを、様々な角度から一晩じっくり見られるように工夫が凝らされいたことが、CGを使って平易に説明されていました。 銀閣の向かいに渡り廊下でつながったお堂があり、ほろ酔い加減の足利義政が、月の運行に従って月を追うように二層から一層に降り、さらに別棟に渡って月と白く映える銀閣のコラボレーションを楽しんだのではないか、という想像は、とても楽しいものです。  一方、足利義政は応仁の乱にも目をそむけ、餓死者が大量にでても頓着せずに月や花に浮かれていた、無能の将軍というイメージが強くあります。 くやしくぞ...
美術

上村松園の美人画

現在、東京国立近代美術館で、上村松園展が開催中です。 これを是非見に行きたいと思っていましたが、人気の高い画家だけに土日に行ったら人の頭を見に行くようなものだと危惧し、今日休暇をとって、朝一番に出かけました。 しかし、作戦は失敗。 年配のご婦人を中心に、券売所は二重三重の列がとぐろをまいていました。 なんとか入館しましたが、まさに見えるのは白髪頭や禿げ頭ばかり。 平日でこんなに混んでいる美術展は初めてです。 それでもじりじりと前に行き、いくつかの見たかった絵は見ることができました。 その他の絵は、残念ながら素通りせざるをえませんでした。 上村松園の絵はほとんどが美人画ですが、男が描くとどこか艶っぽく、性的な香りがするのに対して、女性が描くと、清らかな美しさが強調されます。 若い美人、母と子、恋に狂った女、舞い踊る女、蚊帳をつる女、どれもどこか清らかです。 女性に人気が高いのも故なしとしません。  その後、行く予定ではなかったのですが、消化不良気味だったので、工芸館にも立ち寄りました。 茶事をめぐって展です。 こちらは近世から現代の茶道具などが並んでいて、渋い展覧会でした。 本館とは正反...
美術

退廃

土曜日に芸大美術館に行き、シャガールの絵に感銘を受けたことは、すでにブログに書きました。 今では何の違和感もない写実から遠く離れたシャガール等の絵画ですが、一時期、ドイツで退廃芸術として迫害されていたことがあります。 ナチは優れた北方民族の芸術は、健康的で分かりやすくあらねばならないと考え、抽象的な芸術を病的退廃として退けたのです。  皮肉なのは退廃芸術論を最初に唱えたのが、ユダヤ人の医者だったことです。 ブダペスト生まれの内科医、マックス・ノルダウは、近代芸術が規格を外れていったのは、急速な近代化による環境の変化のため、多くの芸術家が脳、もしくは眼、あるいは精神の病気に罹ったためだと説きました。そのために精神病患者に絵を描かせ、近代絵画との類似を指摘する念の入れようです。 この説は19世紀末、日本を含む多くの国々でかなり受け入れられたようです。 印象派からダダイズム、シュールレアリスムに至る一連の近代芸術が、多くの伝統的芸術愛好家から蛇蝎のように嫌われていたのでしょうね。  ナチはこの説を援用し、いわゆる近代芸術家は、スラブ人やモンゴロイド等の劣等人種か、そうでなければ精神病だと断じ...
美術

シャガール

昨日は東京芸術大学美術館に足を運びました。 「シャガール ロシア・アヴァンギャルドとの出会い」展です。 シャガールは色彩の魔術師と呼ばれる天才画家ですが、その色彩感覚の鋭敏さは、驚嘆すべきものです。他のロシア・アヴァンギャルドの画家の作品も数多く展示されていましたが、遠目から見ても、シャガールの作品はそこだけスポットライトが当たったかのように、輝いて見えます。 この時期の絵は、ピカソにしてもダリにしても、どこか不思議な構図を持っています。シャガールもご多分にもれません。 しかしなぜか、シャガールの作品は明るく、楽天的な印象を与えます。 こればっかりは持って生まれた資質としか言いようがないものです。 このところ日本美術の展覧会にばかり足を運んでいましたので、久しぶりに見る現代西洋アートは、私に鮮烈な印象を与えました。 じつをいうと、30歳を過ぎるまで、私は日本美術よりも現代西洋アートを好んでいたのです。シャガール (ニュー・ベーシック・アート・シリーズ) (ニュー・ベーシック・アート・シリーズ)インゴ・F・ヴァルター/ライナー・メッツガータッシェンシャガール―色彩の詩人 (「知の再発見」...
美術

江戸絵画

広尾の山種美術館へ行ってきました。  この美術館は近現代の日本画を専門としていますが、江戸絵画も多く所蔵しているとのことで、今回は「江戸絵画への視線」と銘打った展覧会です。 江戸絵画といっても浮世絵はなく、狩野派や琳派、文人画などが所せましと並んでいました。 わけても酒井抱一の絵は上品なうえに私を引き込む力があり、気に入りました。 もし一点もらえるとしたら、「月梅図」でしょう。左から:酒井抱一「飛雪白鷺図」「菊小禽図」「秋草図」「月梅図」 暑いなかけっこうな人出で、江戸絵画の人気の高さがうかがえました。もっと知りたい酒井抱一―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)玉蟲 敏子東京美術酒井抱一 (新潮日本美術文庫)玉蟲 敏子新潮社↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
美術

日本美術のヴィーナス

日比谷の出光美術館に出かけました。 日比谷公園の地下駐車場に車を停めましたが、ガラガラでした。お盆なんですねぇ。  展覧会は、「日本美術のヴィーナス」です。 江戸から終戦直後までの、浮世絵を始めとする美人画を一堂に並べたものです。 最初の絵が普賢菩薩だったのには驚きました。 中性的に表現されてはいるものの、男じゃないですか。 しかしその後は、遊女やら少女やらの美人画ばかりで、飽きさせません。  私がとくに気に入ったのが、葛飾北斎の月下歩行美人図です。 図録の写真を撮ったのですが、フラッシュで焼けてしまいました。  はかなげな美人が物思わしげに月の下をゆるゆると歩く姿は、なんとも幻想的で、私はしばし、この絵の前に立ち尽くしました。 この図録を枕の下に入れたら、満月の晩、現れて、私と夜の散歩を共にしてくれないでしょうか。 あるいは夢に現れて、月夜の逢瀬を演じてはくれないでしょうか。 画狂老人の筆の冴えは、はるか時を越え、私に恋心を抱かせたのです。
美術

現代の茶

虎ノ門の智美術館に行ってきました。 展覧会は、「現代の茶」です。 現代の陶工の手による名品の数々が展示されていました。 茶道具を美術館で観るのは歯がゆいですね。 どうしても、手にとって観たくなります。 茶道具は洗練された機能美が魅力だと思いますが、今回の作品は、奇をてらった、前衛的な道具が多かったように思います。 これで一服いただきたいものだ、というような道具は残念ながらありませんでした。 帰りは暑い中、赤坂のあたりをぶらつきました。 今日は立秋ですが、そんな気配はありません。 セミの声が、騒々しく、暑さを倍増させたのです。智美術館のHPです。
美術

能の雅 狂言の妙

今日は猛暑をおして六本木、サントリー美術館に出かけました。 「能の雅 狂言の妙」展です。 おそらくこれほど大規模な能・狂言に関する展覧会は、史上初ではないでしょうか。 衣装、面、小道具、大道具、それに絵巻まで、展示物は多岐に渡っており、私はしばし陶酔しました。 国立能楽堂が集めたコレクションということで、私はそう広くもない美術館を二時間近くもさまよったのでした。 能楽は演劇や舞踊としてだけではなく、それに関わるあらゆるものが美的なのです。  その洗練された美は、私のわずかな知識からすると、世界に例を見ないものです。  このような幻想的な総合芸術を生みだした我がくにの祖先たちの優れた感性には、驚嘆せざるをえません。 その芸術性は、古典でありながら前衛的で、先進的です。 三島由紀夫は「近代能楽集」を著しましたね。 能は今なお、進化し続けているのです。近代能楽集 (新潮文庫)三島 由紀夫新潮社
美術

MASKS 仮の面

猛暑のなか、千葉市美術館に行ってきました。 「MASKS 仮の面」展です。NHKの日曜美術館で紹介されたせいか、盛況でした。 日本、アフリカの仮面を中心に、アジアやオセアニアの仮面がこれでもか、というほど展示されていました。 多くは、呪術的な意味合いの濃い、厄除けや、あるいは精霊を模ったものです。日本でいえば、天狗や鬼の面がこれにあたります。 そしてそれらは、不気味でありながら、どこかユーモラスです。 人々の暮らしがそうであるように。 呪術的な面に比べて、能面は、それが般若であっても爺であっても、また醜女であっても、はるかに洗練され、美的です。 とくに今回 の展示のように並べてあると、一目瞭然です。 人々の祈りが凝縮した呪術的な面も魅力がありますが、私はどうしても、スタイリッシュな能面に魅かれます。仮面―そのパワーとメッセージ佐原 真,勝又 洋子里文出版能面入門金春 信高平凡社
スポンサーリンク