文学

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秋の長雨

今日も冷たい雨。 今年は夏からずうっと雨が多いように感じます。  週末も雨の予報。 しかも今週末は台風の予報で、珍しく、2週連続して週末、台風となりそうです。 クサクサします。 秋萩を 散らす長雨(ながめ)の 降るころは ひとり起き居て 恋ふる夜ぞ多き 「万葉集」に見られる短歌です。 秋の長雨の晩、一人起きだして、人恋しく思う、といったほどの意でしょうか。万葉集 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)角川書店角川書店 さすが、万葉歌人が歌うと、私のように「クサクサします」とはならず、なぜか風情を感じさせるのですねぇ。にほんブログ村 人文ランキング
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花の鎖

台風が近づいているとかで、朝から本降りです。 どこへも出かける気にならず、無聊をかこって、小説を読むことでおのれを慰めて過ごしました。 当代随一のストーリー・テラー、湊かなえの「花の鎖」を読みました。 文庫本で350ページほどですが、面白くて、一気に読みきってしまいました。花の鎖 (文春文庫)湊 かなえ文藝春秋 梨花・美雪・紗月という、3人の女性の物語が並行して描かれます。 それぞれに興味深いものですが、3人のつながりがよくわかりません。 それぞれの名前から、雪月花、にちなんでいることが覗えるだけです。 そしてそれぞれ、雪・月・花という章に分かれて進んでいきます。 しかし物語の後半にいたって、時系列が分かってきます。 つまり、紗月が娘、梨花が母親、美雪が祖母、と言う具合。 それが同時並行で描かれるので、最初は同時代を生きる3人の若い女性の話なのかと勘違いさせられます。 そして、梨花に毎年送られる豪勢な花と、その送り主、K。 Kとは何者なのか、美雪に起こった因縁が娘の梨花、孫の紗月にまで及ぼすことになった元とは何なのか。 謎解きのような面白さと、号泣必至の結末。 あまり多くは語りますまい...
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瑠璃の海

昨夜、小池真理子先生の「瑠璃の海」を読了しました。 文庫本で500頁ちょっとの長編でしたが、わりあいすんなり読めました。 相変わらず平易で読みやすい文章です。瑠璃の海 (集英社文庫)小池 真理子集英社 で、読後感。 これは好悪が分かれる小説だろうな、と思いました。 高速バスの事故で夫を失った30代後半の萌。 同じ事故で小学生の娘を失った40代前半の売れない小説家。 小説家は、とうの昔に離婚していて、娘を一人で育てていました。 萌と小説家は、遺族の会で知り合います。 そして、急速に魅かれあっていきます。 耐えがたい喪失感を抱えた二人は、その喪失感を共通項にして、結びつきを強くしていったのでしょうか。   売れないとはいえ一応小説だったため、事故後1年も経たないうちに付き合い始めた二人を週刊誌が面白おかしく取り上げたり。 すでに事故死した夫が、生前浮気していたのではないかと萌が疑ったり。 さらには、結婚前に少し付き合っていただけの男に、萌が体の関係を迫ったり。 小説家との情交に溺れて会社をさぼったり。 小説家はふらっといなくなって、酔っぱらって喧嘩したあげく、怪我を負ったり。  およそ道徳...
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楽園は兄妹を地獄に落とすか

昨夜、ずいぶん昔に読んだ夢野久作の「瓶詰の地獄」を読み直しました。瓶詰の地獄 (角川文庫)夢野 久作角川グループパブリッシング ごく短いながら、強烈な印象を、少年の頃の私に残したことを覚えています。 なぜか昨夜、急に読み返したくなって、パソコンを開き、青空文庫を検索したところ、アップされていたのを確認した時は、嬉しくなりました。 内容はいたってシンプル。 ある島の村に、ビール瓶が3本、流れ着いているのが発見されます。 中にはそれぞれ鉛筆で書かれた手紙らしきものが入れられています。 そのことを海洋研究所に報告し、提出する旨の村役場による候文が最初に置かれます。 その後、難破してその島に流れ着いたと思しき兄と妹の2人の手紙が、それぞれに入っています。  その島に流れ着いた時、兄は11歳、妹は7歳。 島にはパイナップルやバナナ、鳥の卵などが豊富にあり、食うに困りません。 難破した時に避難に使ったボートを建材にして、小屋を作り、2人は幸せに暮らします。 そこはまさしく、二人だけの楽園でした。 二人は聖書を大事にしていることから、クリスチャンであることが示されます。 数年経つうちに、2人はたくま...
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首折り男のための協奏曲

昨日は奇妙な短編集を読みました。 「首折り男のための協奏曲」です。首折り男のための協奏曲 (新潮文庫)伊坂 幸太郎新潮社 一瞬にして狙った相手の首を捻じ曲げ、即死させる殺し屋。 探偵であり空き巣常習犯の男。 この2人を軸に、2人の周囲の人々の姿が描かれます。 それぞれの短編は、繋がっているようで、じつは繋がっていません。 これは殺し屋と探偵兼空き巣を描いた物語ではなく、その周りの普通の人々を描いたものです。 帯の宣伝文句を信じると、騙されます。 まぁ、一気に読んだのだから、そこそこ面白かったのでしょうが、なんとも中途半端な感じがします。
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カズオ・イシグロ先生、ノーベル文学賞受賞

今日は午前中、休暇を取りました。  首が痛むので、整形外科に行ってから出勤しようと思っています。 日系英国人作家、カズオ・イシグロ先生がノーベル文学賞を受賞された、との一報が飛び込んできました。 うれしいですねぇ。 私は先生の著作の熱心な読者ではありませんが、過去に5冊、読んで、それぞれに感銘を受けました。 私が読んだのは、   「わたしたちが孤児だったころ」  「忘れられた巨人」  「浮世の画家」  「日の名残り」  「わたしを離さないで」 です。わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)Kazuo Ishiguro,入江 真佐子早川書房忘れられた巨人Kazuo Ishiguro,土屋 政雄早川書房浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)飛田 茂雄早川書房日の名残り (ハヤカワepi文庫)Kazuo Ishiguro,土屋 政雄早川書房わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)土屋政雄早川書房 サスペンス調の作品、SF、ファンタジー、失われゆく古い英国を回顧したものなど、内容は多彩です。 そのなかで私が最も深く感動したのは、「わたしを離さないで」でしょうねぇ。 5作品とも、このブロ...
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名月

今宵は中秋の名月。 首都圏では、きれいなお月様が拝めそうです。 ススキや団子を用意する暇はありませんが、自宅のベランダから、月見酒としゃれこみたいと思います。 名月や 池をめぐりて 夜もすがら 松尾芭蕉の句です。 月を見ながら池のほとりを散策していたら、夜が明けてしまった、という意でしょうか。 だとしたら、月の美しさをひたすら称揚する、耽美的かつ、昂揚感が感じられる句ですね。 芭蕉全句集 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)雲英 末雄,佐藤 勝明KADOKAWA / 角川学芸出版 一方、同じ松尾芭蕉に、 俤(おもかげ)や 姥ひとり泣く 月の夜 という句もあります。  一人月を眺めていたら、すぐ近くに、月を眺めながら泣いている老婆がいた、ということで、前の句とはだいぶ趣が異なります。 月の美しさのみならず、月の儚さ、さらには人の生というものが持つ根源的な儚さを感じさせ、胸に迫ります。 私が今宵、月を観てどんな感慨にふけるのかは分かりません。 ただ、来し方を振り返ることはせず、今日のことと明日のことのみ考えたいと思います。 今日と明日のことだけを考えて暮らす生活。 それこそが、精神障害の完全...
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ふたりの季節

昨夜は小池真理子御大の「ふたりの季節」を読みました。 文庫本で130頁ほどの中編。 1時間もあれば読み終わる、気楽な作品です。ふたりの季節 (幻冬舎文庫)小池 真理子幻冬舎 読後感は、なんだかさっぱりしているなぁ、というもの。 この作者には珍しいかもしれません。 ドラマティックな展開のない、小品だからかもしれません。 50代半ばの由香。 忙しい毎日を送っていますが、短い夏休みをとって、カフェでくつろいでいるところ、偶然、35年ほど前に別れたかつての恋人、拓と再会します。 物語は、カフェで2人が数時間語り合いながら、2人が青春時代を過ごした1970年代初頭を回顧するという短いものです。 高校から大学のはじめにかけての2人の恋。 結婚の約束までしながら、これといった理由もなく、2人は別れてしまいます。 その後30数年。 それぞれに結婚し、子供も成人しています。 会話のなかで、由香は離婚し、拓は妻と死別していることが語られます。 私は1969年生まれなので、1970年代はじめの風俗というか、時代感覚がよく分かりません。 物語では当時流行った音楽や映画、小説のことが多く語られますが、私にはもう...
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人魚

もうすっかり秋ですねぇ。 この前の土曜日には、稲毛の浜を散策しました。 秋の海。 なかなか風情があります。 秋の暮 大魚の骨を 海が引く 西東三鬼の句です。西東三鬼全句集三橋 敏雄沖積舎 秋の海で、大きな魚の骨が海を引いていく、ということかと思います。 稲毛の浜は内海ですので、たいした波とてありませんが、まるで私自身が海に引きずり込まれるような錯覚に陥る句です。 もしかしたら、私は何もかも投げ出して海に引きずり込まれ、大海を自由に泳ぐ、男ながらの人魚になりたいのかもしれません。
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ノーベル文学賞作家の少女小説

昨夜、川端康成先生の少女小説、「親友」を読みました。 なにしろ子供向きに書かれた小説ですから、たいへん読みやすいものでした。 それでいて、川端康成先生らしい、文学的香気にあふれた佳作だったと思います。親友 (小学館文庫)川端 康成小学館 川端康成先生の、いわゆる純文学作品は、今も文庫本などで容易に手に入りますが、結構書かれていたという少女小説は、あまり見当たりません。 そういう意味では、貴重な復刻です。 私はかつて、戦前の少女たちに人気を博したという雑誌、「少女の友」復刻版で「乙女の港」という少女小説を読んで、感銘を受けたことがあります。完本 乙女の港 (少女の友コレクション)中原 淳一実業之日本社 これは、戦前の女学生たちの間で流行したという、S(sisterの略)という、少女同士の疑似恋愛を描いたものです。 昨夜読んだ「親友」は、もう少し幼い、中学1年生の少女たちの物語で、時代もややくだって、戦後、昭和25年頃を舞台にしています。 中学の同級生で、顔も背丈もそっくり、誕生日まで一緒だった2人の少女と、家族や先生との間の短い物語です。 夏休み、鵠沼の海岸近くの親戚の家で2人で滞在して...
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銀婚式

昨夜は篠田節子の「銀婚式」という小説を読みました。 文庫本で380ページほどですが、一気に読みました。 タイトルからいって、夫婦の25年間の物語を想像すると、肩透かしをくいます。銀婚式 (新潮文庫)篠田 節子新潮社 これは、地味な男の、普通の物語だといえるでしょう。 一流大学を出て、証券会社に勤め、ニューヨーク支社で働く高澤。 しかし、妻は米国生活に慣れず、気鬱に沈み、幼い息子を連れて帰国してしまいます。 やがて、離婚。 ほどなくして、証券会社が倒産。 その後中堅の古い保険会社に再就職しますが、古臭い社風にあわず、リストラされてしまいます。 つてを頼って仙台のおバカ私立大学で経済学を教える教員になります。 ここで、おそろしく勉強の出来ない学生たちの指導に悪戦苦闘したり、事務職の若い女との恋愛沙汰があったりします。 また、大学受験を控えた息子の相談に乗ったり、別れた妻が親の介護に疲れているのを助けたり。 大学に合格した息子がデキ婚したり。 何気ないようで、じつは結構たくさんの問題が発生する、普通の人生が、淡々と綴られていきます。 圧倒的多数の人々は、普通の人生を生きているわけで、そこに、...
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「月光」あるいは悪と赦し

昨日、ひどく後味の悪い小説を読みました。 「月光」という作品です。月光 (中公文庫)誉田 哲也中央公論新社 R18学園ミステリーという触れ込み。 R18というとおり、性描写、残酷描写がけっこうひどいです。 受け付けない人は、これだけでダメでしょうね。 しかし、私には、非常に印象の残る作品でした。 後味が悪いだけではない、力のある作品で、その力が、今日の私を落ち込ませて、仕事も手につきませんでした。 ある作品に接して、その後何日も落ち込むことがたまにあります。 それは小説でも、映画でも。 過去に一番ひどかったのは、高校三年生の時に見た、ベトナム戦争を描いた「プラトーン」。 それを見た翌日、学校で、「どうしたの?」と心配されるほど落ち込みました。 その時は翌日もう一回見るという荒療治に出たのを覚えています。プラトーン トム・ベレンジャー,ウィレム・デフォー,チャーリー・シーン,ケビン・ディロン,フォレスト・ウィテカー20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 「月光」は、美しい女子高生の死をめぐる物語です。 同級生男子にバイクではねられて事故死してしまった女子高生。 その妹が...
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アクセス

昨日、ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞したという小説を読みました。 「アクセス」です。アクセス (新潮文庫)誉田 哲也新潮社 うーん、微妙。 インターネットが登場してから、この手の作品はやたらと増えましたが、なかなか上質のものは生まれません。 少年少女たちの冒険譚として読めば、恋あり、女同士の友情あり、援助交際にいそしむ美少女ありで、そこそこ楽しめますが、あくまで子供向きのような気がします。
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プラージュ

今日は職場が電気設備点検のため、臨時のお休み。 3連休になりましたが、体調が悪く、ほぼ引きこもりです。 で、小説を読みました。 「プラージュ」という作品です。プラージュ (幻冬舎文庫)誉田 哲也幻冬舎 一階が昼は定食屋、夜が飲み屋になる飲食店で、その名前がプラージュ。 二階は7部屋あるシェアハウスになっています。 このシェアハウス、ちょっと変わっています。 住民は全員前科者。 そして、部屋にドアはなく、カーテンがあるだけです。 ここでの様々な出来事を描いた、一種の人情喜劇のような印象ですが、ラストは衝撃的です。 前科者がなかなか社会に受け入れられずに苦しむ姿が、乾いた印象で語られます。 犯罪を犯した過去はかえられないとしても、罪を償い、再スタートをきろうとしている人々への差別は許されるのか、と鋭く問いかけます。 ちなみにプラージュとはフランス語で海辺のこと。 海と陸地の狭間に、犯罪者との社会との断絶を象徴させているようです。 本来重くなるテーマを、読みやすくて面白いエンターテイメントに仕上げた技量はたいしたものだと思います。
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千年

来週の火曜日、8月22日は私の誕生日。 48歳になります。 48年なんて、長い歴史から見ればわずかな期間です。 人間の歴史は宇宙の歴史からみれば一瞬ですが、それでも、現在を生きる私としては、とてつもなく長い年月の積み重ねに感じます。 そういえば、子供の頃は冷房は居間にしかなく、扇風機だけの自分の部屋で眠らなければならない真夏は過酷でした。 学生の頃、実家が農村の友人宅を尋ねたら、トイレは水洗になっておらず、築100年の茅葺の家で、まるで日本昔話のようだと驚いたことがあります。 台所は土間で、居間は板の間で囲炉裏がありました。 近年の技術の進歩はすさまじい勢いで、情報環境をはじめとして、30年前の暮らしと現在とでは、大きく異なっています。 今私がこうして当たり前のようにアップしているブログも、ほんの20年ほど前までは、ほとんど見当たりませんでした。 時代は移ろい行くようです。 そう思うと、千年も昔のことなど、想う術とてありません。  千年を 世界の人の あゆみける 路ほそぼそと 眼にうかび来る    窪田空穂の短歌です。 千年の歩みなんて、眼には浮かびませんが、壮大な歌だと思います。窪田...
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