文学

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さよならの代わりに

今日は午前中、都内の某ホテルで会議でした。 学界の重鎮に何人もご足労願い、私が所属する機関の研究の方向性を話し合う重要な会議。 疲れました。 午後、職場に戻るのが面倒なので、休暇を取って帰宅しました。 午後は読書。 貫井徳郎の小説。 「さよならの代わりに」というミステリ仕立てのSFを読みました。 なんとなく切ない、青春コメディといった趣。 気楽に読むことができました。 明日からまた職場に通わなければいけません。 いつまでも物語の世界にどっぷり浸かって生きていければ、こんな幸せなことはないのですが。さよならの代わりに (幻冬舎文庫)貫井 徳郎幻冬舎
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セーラー服歌人

最近、セーラー服歌人として話題の鳥居の歌集「キリンの子」を読みました。 鳥居と言う人、2歳のときに両親が離婚。 小学5年生の時には目の前で母親が自殺。 養護施設での虐待、ホームレス生活などを経験したという凄絶な過去をお持ちです。 中学生の頃には友人が電車にはねられて自殺する現場にも居合わせたそうです。 自身、自殺未遂やリストカットを繰り返したとか。 義務教育をまともに受けられなかったことを表現するためにセーラー服を着ているそうです。 年齢は不詳。 あおぞらが、妙に、乾いて、紫陽花が、路に、あざやか なんで死んだの いかにも稚拙な歌ですが、不思議と胸に迫ってきます。 冷房を いちばん強くかけ 母の体はすでに 死体へ移る これもうまいとは言えませんが、その情景を思い浮かべると、迫力があります。 それを、冷静に詠ってみせるところに、歌人の真骨頂があるのでしょう。 自身の自殺未遂を詠んだ歌では、 靴底に 砂や海藻沈めたまま 入水後の冬 迎えたブーツ というのが印象的です。 虐待を詠んだ歌として、 理由なく 殴られている 理由なく トイレの床は 硬く冷たい などがあり、慄然とさせられます。 しゃ...
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わたしたちが孤児だったころ

昨夜、カズオ・イシグロの「わたしたちが孤児だったころ」を一気に読了しました。わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)Kazuo Ishiguro,入江 真佐子早川書房 この作者に特有の、どこか切ない感じや、時の流れとともに必然的に訪れる喪失感のようなものを強く感じました。 第一次大戦後。 クリストファー・バンクスは上海の租界で生まれ育ちます。 前半はわりとゆっくりした感じで、隣に住む日本人少年との友情などが描かれます。 ただし、それはクリストファーの追憶という形を通して。 したがって、記憶の錯誤などがあり、必ずしも真実ではありません。 クリストファーが10歳の頃、両親が相次いで謎の失踪を遂げ、彼は孤児になってしまいます。 やむを得ず、英国の伯母のもとに引き取られます。 長じて、彼は探偵になります。 それは、やがて失踪した両親を探すためでもあったのでしょうか。 彼はいくつもの難事件を解決して名声を得、ロンドンの社交界で知られた存在になります。 そしてついに、日中戦争まっただ中の上海に戻り、両親を取り戻すべく、無謀ともいえる捜査に乗り出すのです。 クリストファーの印象はどこかおぼ...
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あじさい

今日で5月も終わり。 そろそろ梅雨でしょうか。 梅雨の後には、過酷な夏がやってきます。  紫陽花や 昨日の誠 今日の嘘 正岡子規の句です。   日々色を変える紫陽花を擬人化したものかと思います。 人というもの、昨日には誠実であり、またAという相手には真面目に接していても、明日には嘘をつき、Bという人を裏切ったりします。 人と人との付き合いというのは難しいものです。 そうはいっても、概して誠実で真面目、という人もいれば、100人中99人から不誠実で信用できないと思われる人もいます。  概ね日本人は親切で誠実だということになっていますが、それも心々。 受け取る人によって異なるでしょう。 日々乱高下する私の狂った精神が、紫陽花のようではなく、穏やかであり続けることを望みます。にほんブログ村人文ランキング
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新世界より

ドボルザークの交響曲のことではありません。ドヴォルザーク:交響曲第9番 新世界よりチェコ・フィルハーモニー管弦楽団,ノイマン(ヴァーツラフ),ドヴォルザーク日本コロムビア 貴志祐介のSF長編のことです。 文庫本で上中下の3巻、計1,500頁を超す大作をやっと読み終わりました。新世界より 文庫 全3巻完結セット (講談社文庫)貴志 祐介講談社 SFの宿命というか、無理目なストーリーではありましたが、興味深く読みました。  この作者はホラー作家というイメージが強いですが、SFも書くのですね。 千年後の日本。 大人になると呪力と呼ばれる超能力を発動することができるようになった社会を描いています。 一見すると平和で豊かな社会ですが、業魔だの悪鬼だのと呼ばれる突然変異が生まれ、町の平和を脅かします。 また、高度な知能を持つバケネズミのコロニーを人間が支配しています。 好奇心に駆られ、タブーを犯し、ゆえにひどい目に会う少年少女たちの友情や成長を描いて、冒険譚でありながら、どこかノスタルジックな味を醸し出しています。 まずは突飛な物語の世界に入り込めるかどうかが、この小説を面白く読めるかどうかのカギ...
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噴水の

今日はぐんぐん気温が上がって、千葉でも25度を超えたようです。 高崎では驚異の30度超えとか。 桜もすっかり散ってしまい、早くも初夏を思わせる陽気です。 噴水の しぶけり四面(よも)に 風の街 石田波郷の句です。石田波郷集 (朝日文庫―現代俳句の世界)石田 波郷朝日新聞社 初夏を詠んで瑞々しいですね。 普段、平日は仕事が嫌で憂鬱な気分でいることが多いですが、柄にもなく、夏の匂いを感じて気分が良いようです。 ずうっとこんな感じで過ごせれば良いのですが。にほんブログ村 人気ブログランキング
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冬の伽藍

小池真理子先生の「冬の伽藍」を読み終わりました。冬の伽藍 (講談社文庫)小池 真理子講談社 美しい背徳、激しい恋情、そして肉欲。 美しくも残酷な物語の世界に酔いました。 三年前夫を交通事故で亡くした28歳の悠子。 彼女は夫との思い出が詰まった東京を捨てて軽井沢の小さな診療所で薬剤師として働き始めます。 診療所の医師は、やはり三年前に妻を亡くした科目な義彦。 義彦は世捨て人のように、他人との接触を絶って暮らしています。 そして、義彦の義父で東京でクリニックを開業する英二郎。 英二郎は軽井沢に巨大な別荘を持ち、たびたび軽井沢診療所を訪れます。 英二郎は異常なまでの女好きで、悠子を誘惑します。 しかし、悠子と義彦はいつしか互いに惹かれあい、恋に落ちています。 義彦との恋におぼれながら、英二郎の誘惑にも惹かれる悠子。 義彦の妻は自殺しており、義彦は英二郎が妻を手込めにしたため、それを苦に自殺したのだと信じています。 英二郎が妻にしたのと同じように、悠子を誘惑していると知った義彦は、激情に駆られ、義父を殺害してしまうのです。 刑務所に収監された義彦と悠子は手紙のやり取りを始めます。 しかし、義彦...
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迷妄

今年は桜をゆっくりと鑑賞する時間がとれませんでした。 先週末は桜は満開でしたが、土日ともあいにくの雨。 通勤の車から見る桜、早くも散り始めています。 今週末、散り乱れる花見を楽しむことができるでしょうか? 散る桜 残る桜も 散る桜 良寛はそう嘆きました。訳註 良寛詩集 (ワイド版 岩波文庫)良寛,大島 花束,原田 勘平岩波書店 桜は必ず散るもの。 短い文句のなかに、諸行無常を詠みこんだのでしょうか。 人もまた、必ず死に行くもの。 40代後半になって、近しい人の訃報に接することが多くなりました。 はるか年上の先輩ならまだしも、後輩が心筋梗塞で突然死したり、自殺したり。 その都度、私自身の未来を思うとともに、来し方を振り返らずにいられません。 私のこれまでの生き方は間違っていたのではないか、少なくとも為すべきことを為さず、ただ生きるため、いや、死なないためだけに職にしがみついてしまったのではないか、という後悔の念に捕らわれることが多くなりました。 それというのも、ここまで来てしまっては、今の生き方を変えることは出来ないのだという、深い諦念の為せる業のような気がします。 しかし、人は未来にむ...
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隠れキリシタン

先日、テレビで爆笑問題が隠れキリシタンの末裔を追った番組を見ました。 明治維新後、キリスト教禁教が解かれてから、隠れキリシタンは普通に教会に通うキリスト教徒になったのだと思っていましたが、驚いたことに、今もなお、昔ながらの信仰を保ち続けている人々が存在するそうです。 さすがに隠れる必要はありませんが、隠れキリシタンが信仰したというマリア像、観音様です。 また、墓石の上には小石がいくつも置いてあり、拝むときにその小石を十字の形に並べ替え、拝んだ後、またバラバラにすることで、キリシタンの墓だということが分からないようにしたそうです。 隠れキリシタンであることが発覚すれば、命を落としかねない状態で、よくも信仰を捨てなかったものだと思います。 それらの行為から感じられるのは、隠れキリシタンたちの切ないばかりの願望。 苦しい生活が続く今生を、信仰を貫いて生きとおしたなら、天国に行き、永遠の平安を得られるという、普通の仏教徒が聞いたら詐欺かと思われるような教義を、ひたすらに信じることで、この世の苦しみに耐えようとしたのですねぇ。 よほど毎日が辛かったのでしょう。 仏教にも浄土信仰というのがあり、キ...
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オールド・テロリスト

今日から4月だというのに、冷たい雨が降っています。 せっかくの土曜日だというのに。 で、読書など楽しみました。 村上龍の長編「オールド・テロリスト」です。オールド・テロリスト村上 龍文藝春秋 簡単に言ってしまえば、歪んだ現代日本のシステムをリセットしようと、老人たちが過激なテロを繰り広げるというお話。 村上龍らしいといえばこれほどらしい作品はないでしょう。 抜群に面白いエンターテイメントに仕上がっています。 私は、村上龍の頂点は「五分後の世界」かなと思っています。 多くは語りませんが、これは間違いなく名作です。 その後、ゆるやかに筆が衰えてきたような。五分後の世界 (幻冬舎文庫)村上 龍幻冬舎 「オールド・テロリスト」は久々の快作です。 ただ、どこか冗長というか、繰り返しが多い感じは否めません。 扱っている題材から、何か社会派のような意味を汲み取る必要はないでしょう。 単に面白いエンターテイメントとして楽しむのが肝要かと思います。にほんブログ村 本・書籍ランキング
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ノスタルジア

午前中、小池真理子先生の小説「ノスタルジア」を読みました。 文庫本で350ページほどですが、一気に読んでしまいました。 小池真理子先生というと、恋愛譚が多いような気がしますが、モダン・ホラーや幻想譚、怪異譚など、幻想文学と呼ぶべき作品も残しています。 「ノスタルジア」は、恋愛幻想文学とでも言うべき趣の作品です。ノスタルジア (講談社文庫)小池 真理子講談社 22歳から31歳までの9年間、父親と同い年で作家の雅之と道ならぬ恋に生きた繭子。 雅之の突然死で不倫相手と死に別れ、その後15年間、東京郊外で一人ひっそりと暮らしています。 それは今を生きているというより、激しい恋に溺れた9年間の思い出に生きているかのごとくです。 突然、雅之の息子、俊之を名乗る男から、父親の真実の姿を知りたいので会いたい、という手紙が届きます。 会ってみると、息子は父親と瓜二つ。 ちょうど雅之が亡くなった46歳。 繭子も46歳になっています。 そして、まるで雅之との恋愛を反芻するごとく、繭子と俊之は恋に落ちていくのです。 ゆっくりとしたペースで、物語は進みます。 それはまるで、中年男女が、性急に異性を求める能力を失...
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民王(たみおう)

昨夜、「民王(たみおう)」という小説を読みました。民王 (文春文庫)池井戸 潤文藝春秋 知りませんでしたが、ドラマ化もされていたんですね。民王スペシャル詰め合わせ DVD BOX遠藤憲一,菅田将暉,高橋一生,本仮屋ユイカ,知英東宝 なかなか愉快な、SF仕立ての喜劇でした。 総理大臣とその大学生の息子が入れ替わってしまうというお話。 面白いのは、総理大臣のみならず、経済産業大臣と息子、野党第一党の党首とその娘も入れ替わってしまい、これはどうやら新手の政治的テロだと気付いて、公安や米国のCIAなどもからんでのドタバタ劇が繰り広げられるというもの。 池井戸潤という作家の小説を読むのは初めてで、面白くはありましたが、なんだか紋切型というか、人間の造型が単純すぎるような気がしました。 清濁あわせ持つような人間や、善人でありながらとてつもない悪や闇を抱えている人物を描き出すのが文学の役割の重要な一つであると思います。 この作品には、その点が決定的に欠けています。 エンターテイメントといえども、底の浅い小説では、ライトノベルと変わりありません。 いや、ライトノベルでも、もう少し深い小説が存在していま...
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最後の家族

久しぶりに村上龍の小説を読みました。 「最後の家族」です。最後の家族 (幻冬舎文庫)村上 龍幻冬舎 学生の頃は、「コインロッカー・ベイビーズ」、「愛と幻想のファシズム」、「五分後の世界」など、壮大でメッセージ性の強い村上龍の小説をよく読みましたが、いつの頃からか、ほとんど読まなくなりました。 なんでだかは分かりません。 骨太な物語が、私を疲れさせたのかもしれません。 「最後の家族」はメッセージ性こそ強いものの、どこか地味で、安心感を覚える作品でした。 リストラに怯える父親、自室に引きこもりながらも、向かいの家のDV被害にあっている主婦を救おうと奮闘する21歳の長男、元引きこもりで、今は宝石デザインの仕事をしている青年と不思議な付き合いを続ける女子高生の長女、そして、年下の大工と密かにデートを重ねる主婦の、4人の家族の物語が、それぞれの視点から語られます。 それは小さな物語ですが、だからこそ、切実な物語でもあります。 そこで、救い、ということが語られます。 引きこもりの長男を救いたい母親、向かいの家のDV被害者の主婦を救いたい長男、リストラが現実味を帯び、救いのない父親、宝石デザイナーの...
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騎士団長殺し

村上春樹の最新作、「騎士団長殺し」を一週間ほどかけて読み終わりました。 第1部と第2部、合わせて1,000ページを越える長編です。 私はいわゆるハルキストの自覚はありませんが、彼の小説はすべて読んでいます。 エッセイとかはほとんど読みませんが。 今回の作品は、春樹節炸裂で、相変わらず奇妙な物語が展開します。 しかし、「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」や「鼠三部作」など、20年以上前の作品がきらきら輝いているのに比べ、「1Q84」などもそうですが、自己の作品を焼き直しているような印象を受けました。 ビッグネームであるがゆえ、出版すれば売れるという驕りがあるのでしょうか。 文章も以前に比べて冗長になっているように思います。 しかし、そこは村上春樹。 つい、読んでしまいます。 この、つい読んでしまうという点が、巨匠の巨匠たる所以でしょうか。 お暇があったら読んで見てください。騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編村上 春樹新潮社騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編村上 春樹新潮社にほんブログ村 本・書籍ランキング
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楽にならざり

今日は無事出勤できました。 でもなんだか体が重くて、しんどい一日でした。 体調のせいか、精神状態もよろしくないようで、なんとなく、憂鬱な日でした。 どれだけこんな日を重ねたら、楽になるのでしょうねぇ。 はたらけど はたらけど猶わが生活(くらし)楽にならざり ぢっと手を見る 石川啄木の短歌です。 もちろん、私のような精神上の問題を詠ったものではないのかもしれませんが、なんとなく、思い出しました。 やっぱり若隠居するしか、私の精神が安穏でいられる道はなさそうです。
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