文学

スポンサーリンク
文学

ペコちゃん雛

今日から3月。 お雛様ももうすぐです。 私には三つ下の妹がいたので、実家には、当時流行っていた7段飾りだか8段飾りだかの立派なお雛様がありました。 今は姪のために飾っているようです。 我が家は子供がありませんが、不二家の景品で当たったペコちゃんとポコちゃんの小さなお雛様を食卓に飾ることを習いとしています。 お雛様だからと言って、華やかなイメージばかりではありません。 大体雛人形というもの、結構不気味です。 夜中に一人で見たら、人形たちが動き出しそうで、薄気味悪く感じるのではないでしょうか。 雛の頬の 冷たきに寄す 我が頬哉 自由律の俳人、尾崎放哉の句です。尾崎放哉全句集 (ちくま文庫)村上 護筑摩書房 お雛様の冷たい頬におのれの頬を寄せるとは、どこか不気味で、物寂しい感じがします。 もっとも、あの真っ白いお雛様の頬が暖かかったなら、よけい気持ち悪いでしょうねぇ。 私もお雛様のお祝いに、我が家のペコちゃん雛の頬を触ってみるとしましょうか。 にほんブログ村 人気ブログランキングへ
文学

蘇生

今日は休暇を取りました。 一番の目的は、障害者自立支援の更新。 これのおかげで、精神科はクリニックも薬局も1割負担で済んでいます。 朝9時ちょうどに千葉市若葉区の保健福祉センターに行ってきました。 我が家から徒歩10分ほどです。 用事はすぐに済んで、洗車をしました。 だいぶ汚れていたので。 その後、昨日の夜から読み始めた「蘇生」という小説を読了しました。蘇生五十嵐 貴久PHP研究所 小学校5年生の時に福島で被災した少年少女たちが15歳になって、両親を震災で亡くして北海道の親戚に預けられた元同級生が、稚内の岬から海に飛び込んで自殺したことを知り、当時の仲間、男女5人が当時の担任に連れられて岬に慰霊に行き、しかし帰りに、岬に繋がるぼろい橋が落ちて、過酷なサバイバルを余儀なくされる、というお話。 岬から町までは150キロもあり、しかもほとんど車が通らないとあって、少年少女たちは、直線距離で40キロの森を抜けていこうとします。 道に迷ったり、野犬に襲われたり。 水も食料も無いなか、さんざん苦労します。 しかしこれは、単なる過酷なサバイバルの物語ではありません。 その過酷さのなかで、それぞれが、...
文学

愚行録

昨夜、貫井徳郎の「愚行録」を一気に読みました。愚行録 (創元推理文庫)貫井 徳郎東京創元社 読んでから知ったのですが、映画化されて、今、上映されているんだそうですね。 でも映像化が難しそうな小説でした。 都内で夫婦と幼い子供二人の一家4人が惨殺されるという事件が起きます。 捜査は行き詰っています。 あるライターが、殺された夫婦の知り合いを次々に訪ね、インタビューをするという形式で物語は進みます。 同僚、大学時代の友人などなど。 で、ハンサムでエリートサラリーマンの夫と、美人で賢い妻という、絵に描いたような理想の二人の人物像が、少しづつ、壊れていきます。 そしてなぜかところどころにはさまれる、妹が兄に語りかける場面。 暴力を振るう両親に育てられ、ゆがんでしまった妹の独白が不気味ですが、物語の結末にいたるまで、この独白と数々のインタビューがどう絡むのか明らかにされません。 愚行というのは、当初、殺された夫婦の若かりし頃のちょっとした意地悪や悪を指すのかと思わせますが、そんなはずもありません。 どんな境遇に育っても、人は誰でも愚行をおかさずにいられないのだと、物語の終盤に気付かされます。 い...
文学

コンビニ人間

昨夜は芥川賞受賞作「コンビニ人間」を読みました。 単行本で150ページほどの中篇ですので、1時間ほどで読めました。コンビニ人間村田 沙耶香文藝春秋 36歳、独身、コンビニ店員歴18年、恋愛経験なし、したがって処女の女の物語です。 この女、子供の頃から少しずれています。 公園で小鳥が死んでいるのを見つけて、他の子供たちは泣きながらお墓を作ろう、と言うのに対し、真面目に、お父さん、焼き鳥が好きだから焼いて食べようなんて主張して、母親にたしめられて「せっかく死んでいるのに」なんてつぶやいてみたり。 小学校で男の子同士が喧嘩を始めて、止めなければ、と思って、スコップで思いっきり男の子をぶん殴ったり。 普通と違う、一風変わった子、と評価されてしまいます。 しかし、コンビニ店員である間は、マニュアルどおりに、しかも明るく元気にしていれば、「コンビニ店員の普通」、でいられて、社会から受け入れられている、と感じることができるのです。 夢の中でもレジを打つほど、コンビニ店員であることにどっぷりとはまっています。 しかし親や友人は、なぜいい年をして結婚も就職もしないのか、と彼女を責めるのです。 コンビニに...
文学

顔のない裸体たち

今日は晴れていましたが、北風が強かったため、終日自宅にこもり、小説を読んで過ごしました。 読んだのは、平野啓一郎の「顔のない裸体たち」です。顔のない裸体たち (新潮文庫)平野 啓一郎新潮社 小説には、一人称、三人称の文体が多く、二人称もごくまれにあります。 三人称の場合、作者が全体を俯瞰する、神の目線で描かれることが多いですが、この作品は、一種のフェイク・ドキュメンタリーの形を取っており、ジャーナリストが語る、ということになっていたため、神の目線は取られていません。 それが小説に真実味を与えているかは、ちょっと判断しかねるところです。 小学校から高校までイジメにあっていた市役所職員の片原と、中学教師で平凡な思春期を送った希美子が出会い系サイトで出会い、激しい性交を重ね、ついには野外露出、さらに動画をインターネットの動画サイトに投稿するなど、性的逸脱とも言うべき行為に走り、ある小学校でこっそり野外露出の動画を撮影中に教師らにみつかり、片原は持っていたジャックナイフで教師らを刺し、怪我を負わせるまでの経過が、淡々とつづられます。 これはおそらく、性を描いた文学ではなく、世間が認知する自分と...
文学

「追憶のかけら」あるいは悪意

昨夜、貫井徳郎の「追憶のかけら」を読了しました。追憶のかけら (文春文庫)貫井 徳郎文藝春秋 不思議な小説です。 最愛の妻を事故で亡くした国文学者の大学講師が、ふとしことから、短編をわずか5作残しただけの、忘れられた作家の手記を手に入れます。 この作家が死を前にして、自殺にいたる経緯をつづったものです。 この作中作品、たいへん読み応えがあります。 これだけで、十分一個の作品と言ってよいでしょう。 この手記では、友人の瀕死の復員兵から、かつての愛人に会い、自分の代わりに詫びを入れてほしいと作家が頼まれます。 作家は善意で元愛人を探すのですが、その過程で様々な悪意に出会い、ついには自殺に追い込まれます。 で、その手記を手に入れた大学講師。 彼はなかなか業績が上げられず、このままでは研究者としてやっていけないと感じていますが、手記を手に入れたことで、金鉱を見つけた気分になります。 未発表の手記をもとに論文を書けば、十分な評価が得られるはずだ、と。 しかし、大学講師にも、悪意が忍び寄ります。 大学講師の研究者生命を断とうとまでする悪意。 大学講師の運命は二転三転し、というお話。 貫井徳郎の作品...
文学

贖い

昨日から体がだるく、咳やくしゃみ、鼻づまりの症状があります。 ただ、熱は平熱なので、それほど辛くはありません。 なんとなく違和感がある感じ。 市販の風邪薬を飲んだせいか、寝ても寝ても眠いのです。 晴れた土曜日にはお出かけすることを常としていますが、今日ばかりは自宅でのんびり過ごしました。 リビングのソファでうとうとしたり、小説を読んだり。 小説は、五十嵐貴久の警察推理小説、「贖い」を一気に読みました。贖い五十嵐 貴久双葉社 最近にしては珍しい、上下2段組の単行本でした。 7月1日、2日、3日と、連続して子供を殺害する事件が発生します。 しかし、場所が杉並・埼玉・愛知と離れているうえ、被害者が小学生の男の子、中学生の女の子、1歳の男児と、関連性を指摘する者もなく、それぞれ警視庁、埼玉県警、愛知県警が独自に捜査します。 粘り強い捜査の末、59歳になる大手商社マンが浮かび上がります。 変質者や異常性欲者の若い男に捜査対象を絞っていた上層部はこの見立てになかなか首を縦に振りません。 それもそのはず、商社マンは誰に聞いても、真面目すぎるほど真面目で、部下や同僚、上司からの信頼も厚い、常識を備えた...
文学

埃の如く

今日は大寒。 そのとおり、雨に小雪が混じる、凍えるような寒さです。 もちろん、事務室は暖房が効いていますが、一歩廊下に出れば、寒くてたまりません。 大寒の 埃の如く 人死ぬる 高浜虚子の句です。虚子五句集 (上) (岩波文庫)高浜 虚子岩波書店虚子五句集 (下) (岩波文庫)高浜 虚子岩波書店 俳人の死生観がよく表れています。 人の死など、この世のおおきな流れのなかでは、埃のようなもの。 それを大寒という寒々しい言葉とからめ、一種神々しいような、厳粛な雰囲気を感じます。 この清浄な寒さのなか、死んで行ければどんなに良いか、という、昏い退行の欲求を覚えずにはいられません。 ここ数年、フルタイムで働いてはいるものの、気力体力の衰え激しく、このままでは職場のお荷物になってしまいかねない、という危惧も手伝って。 それでも私は、生きなければならないのでしょうか。にほんブログ村 人文 ブログランキングへ
文学

怪談

朝、起きたら腰が痛く、ひどく体が重かったので、熱を測ったら37度2分ありました。 ほんの微熱ですが、私は極端に熱に弱く、これでは使い物にならんと思い、急遽休暇を取りました。 8時30分に職場に連絡し、風邪薬を飲んで、午後3時まで眠り続け、寝汗をびっしょりかいたら、変に気分が良くなっています。 熱を測ったら36度8分まで下がっていました。 風呂で寝汗でべとべとした体をきれいに洗い、小池真理子御大の短編集、「怪談」を読みました。怪談小池 真理子集英社 7つの短編が収録された、260ページほどの短い小説集です。 タイトルから思い浮かべるような、ホラー小説集とは趣を異にしています。 これと言ってストーリーらしいストーリーが無い、ちょっとだけ不思議な物語がつむがれます。 そしていずれの短編も、怖くありません。 どちらかというと、ほのぼのするような怪異譚です。 御大はかつて、「墓地を見おろす家」のような、本格的なホラー小説を物していますが、今回の短編集はその系譜に連なるものではありません。墓地を見おろす家 (角川ホラー文庫)小池 真理子角川書店 一歩間違えるとエッセイのような軽いタッチで、しかも耽...
文学

物語の勝利

今日はあの阪神淡路大震災から22年の節目。 かかる大災害は人智を超えたものであり、私たちはただ現実の巨大さに、瞑目する他ありません。 事実は小説より奇なり、と申します。 まこと、この世に起こることは、フィクションを超える驚嘆すべきことばかりです。  例えば9.11のテロ。 あんなことは、どんな物語作者でも思いつかない奇想天外な事件でしょう。 さらにはオウム事件。 古くは浅間山荘事件。 現代社会において、小説よりも奇妙な事件がいくつも起きています。 小説をはじめとする物語は、あくまでも虚構であって、現実を模したものであっても、現実を超えるような、一種の怪異譚であることが、その本質であろうと思います。 例え恋愛小説や、サラリーマンの哀歓を描いた小説であっても、そこには必ず、現実を超えるような奇妙な味がなければ、凡庸な作品になってしまうでしょう。 現実を超えること、言わば超現実こそが、小説の真骨頂であろうと、私は確信しています。 で、事実は小説より奇なり、という言説。 これは、小説は本質的に現実を超えることができない、ということを端的に表したものかと思います。 絶望的な言葉と言ってもよいでし...
文学

誘拐

昨夜は五十嵐貴久のミステリー「誘拐」を一気に読みました。誘拐 (双葉文庫)五十嵐 貴久双葉社 示唆に富んだ、上質の娯楽小説です。 会社の人事担当課長として、苦しみながらリストラを進める秋月。 ある時リストラを苦に、元社員が一家心中。 元社員の娘が秋月の娘の親友であったことから、秋月の娘も自殺してしまいます。 秋月自身も退職し、綿密な誘拐計画を立てます。 歴史的な条約を結ぶため韓国大統領が来日するため、警察はその警備に全力を挙げるため、極端に警察力が手薄になるのを見計らって、なんと総理大臣の孫娘を誘拐するのです。 格差社会への憤り、それを許す政府への怒りが、秋月を突き動かします。 息をもつかせぬ疾走感をもって、秋月の犯罪と、翻弄される警察の姿が描き出されます。 引き込まれました。 結末はあっと驚くもの。 基本的に邪悪な人間が出てこない、爽やかなミステリに仕上がっています。 それが物足りない部分もありますが、読後感は清涼です。 まずまず、楽しめました。にほんブログ村 本・書籍 ブログランキングへ
文学

おもへば一夜

門松や おもへば一夜 三十年 松尾芭蕉の句です。芭蕉全句集 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)雲英 末雄,佐藤 勝明角川学芸出版 お正月を迎えて、来し方を振り返ってみれば、一夜の夢のごとくであった、というほどの意かと思います。 この時、松尾芭蕉は30代前半。 ようよう、俳諧師として身を立てることになった時期で、青年らしい気概と、過去を一夜の夢に例えるような老成した感じの、双方が感じられます。 私は今年48歳になりますので、おもへば一夜五十年といったところでしょうか。 何者でもない私ですが、半世紀ちかくを生きてしまいました。 ここまで生きてきちゃったという感慨と、人生うまくいかないものだという思いが交錯します。 しかし今は、人生80年の時代。 まだまだ人生は続くのでしょう。 どんな辛いことがあっても、死なないかぎり人生は続きます。 これからは衰えていくばかりでしょうが、平穏な後半生であることを願うばかりです。にほんブログ村 人文 ブログランキングへ
文学

リカ

昨夜はホラーサスペンス、「リカ」を一気に読破しました。リカ (幻冬舎文庫)五十嵐 貴久幻冬舎 リカというストーカーに追われる中年男の話なのですが、文章のテンポがよく、ぐいぐいと引き込まれました。 本間という男が出会い系サイトで出会ったリカ。 最初、本間はリカとのメールのやり取りで彼女に好印象を持ちますが、少しづつ、リカの異常さに気づいていきます。 長身で顔色が悪く、目に光が無く、体臭がひどく臭い女として描かれます。 前半から中盤にかけて、ひたすら怖いのですが、終盤、リカと直接対決するにあたり、リカの人物造型に無理があることに違和感を感じました。 ひたすら気持ち悪くて怖いただの女なのか、ジェイソンのような化け物なのか、そこらへんが曖昧です。 リカをひたすら怖ろしいただの人間として描けば、名作、「オーディション」のような作品に仕上がったであろうに、そこが残念です。オーディション 村上龍パイオニアLDCオーディション (幻冬舎文庫)村上 龍幻冬舎 「リカ」より後に書かれた、恐るべきストーカー、リカ誕生の秘密に迫った「リバース」のほうが完成度は高かったように思います。リバース (幻冬舎文庫)五...
文学

師走

師走ですねぇ。 しかももう師走も19日。 年末年始の休みも近づいて、なんだか追われるような気分です。 うしろから 追はるゝやうな 師走哉 正岡子規が師走のせわしなさを詠んだ句です。 師走の気分が正直に表現されていますね。子規句集 (岩波文庫)高浜 虚子岩波書店 私は21日(水)に休暇を取っていますので、もう今年の出勤日は5日しかありません。 今年も愚かな1年を送ってしまいました。 何をやっているんだか分からないうちに、ただ目の前の仕事を片付けるのみの1年。 こんな風にして、もうじき就職してから丸25年が経とうとしています。 一年一年を思い起こしてみれば、とてつもなく長い歳月ではありますが、ざっくり振り返ると、まさに光陰矢の如し。 ここまで経っちゃったかという感慨にふける間もなく、今年が終わろうとしています。 明晩は職場の忘年会。 少し、己を振り返ってみる必要性を感じます。 もとより、反省などする気はありませんが。にほんブログ村人気ブログランキングへ
文学

ドーン

平野啓一郎の長編、「ドーン」を読み終わりました。 重い小説でした。ドーン (講談社文庫)平野 啓一郎講談社 この人が「日蝕」でデビューし、同作で芥川賞を受賞したときは、大変な才能が出てきたものだと思うと同時に、猛烈な嫉妬を感じました。日蝕・一月物語 (新潮文庫)平野 啓一郎新潮社 まだ20代だった私は、いつかは小説で食っていきたいと思っていたので、当時、優れた小説を読むと必ず嫉妬を感じたものです。 それは精神障害を発症した35歳の頃まで続きましたね。 「ドーン」の舞台は近未来の2030年代半ば。 NASAは人類史上初めて、有人火星探査を成功させます。 しかし、火星探査の様子はほとんど描かれません。 日本人クルーの明日人を主人公に、恋愛、不義密通、大統領選をめぐる陰謀、社会的悪、宇宙飛行士の精神といった問題が重層的に描かれます。 ほとんど詰め込みすぎ、くらいに。 この小説でもっとも重要なテーマになっているのは、分人(ディヴィジュアル)という概念。 人間は、妻との関係、職場での関係、親子兄弟や友人との関係など、様々な関係のなかで、核となる人格=インディヴィジュアルの他に、様々な分人=ディヴ...
スポンサーリンク