文学

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月夜の島渡り

昨夜は恒川光太郎の短編集「月夜の島渡り」を読みました。月夜の島渡り (角川ホラー文庫)恒川 光太郎KADOKAWA いずれも沖縄の離島が舞台の作品です。 「月夜の島渡り」というタイトルの作品はありません。 あくまで短編集全体のタイトルです。 作者、出身は東京らしいですが、20代後半から沖縄に住んでいるそうです。 東京出身でも、北海道や沖縄に移住する作家や芸術家が多いのはなぜでしょうね。 都会を離れたかった? 異界の空気に触れたかった? 恒川光太郎はおそらくは異界への入り口があちこちに感じられる沖縄が気に入ったのだろうと推測します。 この短編集の物語は、どれも短く、異界へと足を踏み入れるというよりも、沖縄の離島そのものが異界の香りがして、小説というより詩編のような趣を味わうことができます。 その代り、物語としての迫力には欠けるように感じられます。 そこは詩編ですから。 私としては、生まれ変わりを扱って長い時間の流れを感じさせる「私はフーイー」がお気に入りです。 いずれも短いし、不思議過ぎず、この作者特有の抒情というか切なさを感じることが出来るので、入門編に良いかもしれません。 デビュー作...
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死の季節ー右大臣の憂鬱ー

冬季うつ病なんて言って、冬はうつ状態に陥る人が増えるそうですね。 寒いし、日は短いし、死を予感させる季節であってみれば、仕方ないのかもしれません。 28歳で甥、公卿に殺害された右大臣源実朝は、父、頼朝亡きあと、政情不安が続き、兄の頼家が追放されてなお殺害された事実から、家臣に次のような絶望的な言葉を述べています。 源氏の正統は此の時に縮まりをはんぬ。子孫敢えて之を相継ぐべからず。 源氏の嫡流は自分で終わりにしようというわけです。 おそらくは、そう遠くないうちに、家臣らに暗殺されるであろう運命を、かなり明瞭に意識していたのではないかと思います。 そういう意味では、12歳で将軍になった時から、死の季節を生き続けていたのかもしれません。 現とも 夢とも 知らぬ世にしあれば ありとてありと 頼むべき身か  現実とも夢ともつかぬ世の中で、生きているといってもそれを頼みにできるだろうか、といった意かと思います。 聞きてしも 驚くべきにあらねども はかなき夢の 世にこそありけれ 人の死を聞いても驚くにあたらないが、それにしてもなんとはかない夢のような世の中であることよ、といった意でしょうか。 いずれ...
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草祭

インフルエンザによる出勤停止も今日まで。 もうすっかり元気です。 最近お気に入りの恒川光太郎の作品を読みました。 連作短編集、「草祭」です。草祭 (新潮文庫)恒川 光太郎新潮社 小さな田舎町、美奥を舞台にした作品群で、5編が収録されています。 一つ一つは独立した物語ですが、通して読むと、繋がりがあることが分かる仕掛けになっています。 美奥は様々な異界へと繋がる、いわばこの世の一つ奥に存在している町。 主人公たちは、異界に迷い込み、様々な体験をするのです。 「けものはら」は、けものはらに迷い込み、出られなくなった男子高校生の物語。 彼はそこで獣人に変じていくわけですが、母親との複雑な物語が語られます。 「屋根猩猩」は女子高生の独白という形をとって、ある地区の守り神に変じていくお話。 「くさのゆめがたり」では、はるか昔を舞台に、美奥誕生の秘話が語られます。 「天化の宿」は、山中の不思議な宿で、女子高生が苦解きという儀式のための、独特のゲームに高じるお話。 結末が意外です。 最後の「朝の朧町」は、もっとも幻想的で美しい物語です。 これも不思議な町に誘われた者が体験する、息苦しいまでに切ない物...
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零下4度

今朝の首都圏はひどく冷え込み、都心では48年ぶりに零下4度を記録したそうです。 48年前というと、私は生後数か月。 覚えているはずがありません。 低温注意報は33年ぶりだそうです。 33年前と言えば私が中学三年生。 高校受験の時期と重なりますが、それほど寒かったという覚えはありません。 また、首都圏各地で水道から水が出ない、という苦情が水道局に寄せられたんだとか。 凍っちゃったものは水道局に文句を言っても仕方ありますまい。 徒(いたずら)に 凍る硯(すずり)の 水悲し 寺田寅彦の句です。 寺田寅彦が活躍した時代には、書斎には必ず硯と筆が置かれていたことでしょう。 その硯の水が凍ってしまった、ということでしょうか。 怖ろしく寒い書斎ですね。 ちょっと滑稽味を感じる句です。 近年では、筆ペンなどという、便利ですが野暮で無粋な物が跋扈し、硯を使うこともありません。 さすがに私が住むマンション、鉄骨とコンクリートでできているので、保温性が高く、部屋の水が氷るなんていうことはありません。 ベランダに水を張っておけば凍るかもしれませんが。 子供の頃、庭の池に金魚を飼っていて、冬になるとよく表面が凍...
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雷の季節の終わりに

三冊目の恒川幸太郎作品を読みました。 「雷の季節の終わりに」です。雷の季節の終わりに (角川ホラー文庫)恒川 光太郎KADOKAWA 前2作と同様、異界での切ない物語が展開します。 隠(オン)と呼ばれる、この世と微妙にずれた世界で育った少年が、冒険を繰り広げるファンタジー。 隠には、春夏秋冬のほかに、雷季とよばれる季節があります。 その季節には、どんな不思議なことが起こっても不思議ではありません。 風わいわい、とよばれる物の怪に憑かれた少年。 しかし風わいわいは悪さをするわけではありません。 むしろ少年を守ってくれる存在。 鬼衆、と呼ばれる集団や、風葬をする墓町など、不思議で魅力的な舞台装置が揃って、物語を豊穣なものにしています。 ふとしたことから、少年は長い旅をしてこの世にたどり着きます。 その間の冒険が綴られます。 同じ作家の本を三冊続けて読むのは私には珍しいことです。 じつは4冊目も購入してあります。 すっかりこの作者の世界に魅入られてしまったようです。 幸福なことに。 にほんブログ村 本・書籍ランキング
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