文学 読了
村上春樹の新作「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」を読了しました。 このところ、あまりにも長大な大ドラマを紡いできた作者が、久しぶりに、それほど長くない、物語というより詩のような作品を残したという意味で、作者は静かに、衰えの道を歩んでいるのかもしれません。 おそらく、多くの評論家は、これを失敗作と貶すでしょう。 物語としては破綻が目立つし、ラストも中途半端なものです。 しかし私は、失敗作が好きです。 なんとなれば、失敗作にこそ、物語作者の本質が炙り出されると思うからです。 多崎つくるは、高校時代、完璧な男女5人のグループの一員で、それは36歳になった今も、彼を郷愁と苦痛にいざないます。 その5人は、多崎つくる以外、全員、色が入った名前を持っていました。 例えば赤松だったり、青海だったり、そういうことです。 四人はすべて簡便に、アカとかアオとかいうあだ名で呼ばれます。 しかし多崎つくるだけは、つくる、と呼ばれるのです。 5人は名古屋で高校時代を過ごし、それはこの上もなく幸福な短い時期でした。 大学進学にあたって、多崎つくるだけが東京に出、ほかの4人は名古屋に留まります。 そして大...